内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞「今週の本棚」『医学の歴史』書評を寄稿

 本日付の毎日新聞の書評欄に、書評が掲載されています。

内田麻理香・評 『医学の歴史』=ウィリアム・バイナム著

 対象本はこちら。

医学の歴史 (サイエンス・パレット)

医学の歴史 (サイエンス・パレット)

 

  本文で「物足りなさを感じた」というのは、褒め言葉でして、入門書は物足りなくて人の知的好奇心をくすぐるのが役目だと思っています。とはいえ、本書は複雑極まる医学の歴史に筋を通してまとめた構成力が素晴らしい。

 翻訳は id:akihitosuzuki 鈴木晃仁氏と鈴木実佳氏。本文を読んで「あれ?」と思うところがあったので(2カ所だけですが)、原文をKindle版で購入して確認してみたのですが、誠実かつ明快な翻訳でした(というか原文も良いですが、翻訳のほうが、よりわかりやすい。単に私が読めていなかっただけ)。本書は、訳者のおふたりにも恵まれて、良書になっているのだと思わされます。

 この本は、丸善出版の「サイエンスパレット」シリーズに含まれます。新書だと侮ることなかれ。オックスフォード大学出版局の"Very Short Introductions"シリーズを翻訳し、さらに日本版の書き下ろしを加えた理系新書シリーズです。もとのシリーズが40カ国以上で翻訳出版されているのだから定評がある。書評していませんが、こちらもおすすめ。日本発。

科学革命 (サイエンス・パレット)

科学革命 (サイエンス・パレット)

 

  そして、同じく日本発としては、

kasoken.hatenablog.jp

 こちらを過去に書評しています。
 今回ご紹介した『医学の歴史』を含め、「さっと読めるようで、実は深い」入門書が多いので、ぜひ。

『Dream Navi』2006年4月号:インタビュー掲載

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 2016年の4月号、四谷大塚が発行する情報誌『Dream Navi(ドリームナビ)』にインタビューが掲載されています。
 今号の特集は「夢を持ち志へと高める」です。その中の特集3「ここにも、あそこにも不思議がいっぱい! 生活の中のサイエンス」で、家庭×化学の話題で取り上げていただきました。

 四谷大塚に通っている方々の親子向けの冊子ですが、Amazon等でも入手できます。

DreamNavi 2016年 04 月号 [雑誌]

興味を持って下さったら、どうかよろしくお願いします。

毎日新聞「マガジン評」『美術手帖』2月号

 1月31日(日)の毎日新聞に、マガジン評(雑誌評)を寄稿しています。

美術手帖2016年2月号

美術手帖2016年2月号

 

  雑誌評というよりは、行った個展の感想になってしまっていて、デキはよくないですね。反省。
 実は、締切の前日に浦沢直樹展で今号の「美術手帖」を見つけてしまい、担当者さんに「予定の本、変更しても良いですか?」と無茶なお願いをして変えてもらい書いたものです。

kasoken.hatenablog.jp

  もとの予定は、『芸術新潮』1月号でした。こちらに記事にしましたが、江口寿史ボッティチェリ特集も面白かったです。

kasoken.hatenablog.jp

 

『芸術新潮』1月号:江口寿史&ボッティチェッリ特集

芸術新潮 2016年 01 月号 [雑誌]

芸術新潮 2016年 01 月号 [雑誌]

 

  1月号の『芸術新潮』は、第1特集が江口寿史、第2特集がボッティチェリだ。現代の日本の美人画(美少女画)と、ルネッサンス美人画の名手の絵の対決である。

 江口寿史の描く美少女はひたすらうっとりするばかりで、同性が見ても不快に感じない。ああ、かわいいな、きれいだなと思うばかり。最近、地域興しとしていくつかの行政が、「美少女」(あえて括弧付きにする)を売りにしたイラスト、アニメを制作しているが、次元が違う。

 ボッティチェリの特集は、東京都美術館で1月16日から4月3日まで開催されている「ボッティチェリ展」にあわせたものだ。ボッティチェリの描く美人画も、おそらく同性が見ても素直に美しいと思うだろう。彼の描く美人画が、特にマリア像が「うつろな顔」をしていることを指摘している。なるほど。
 東京都美術館には、残念ながらかの有名な「春(プリマヴェーラ)」や「ヴィーナス誕生」はない。でも、「書物の聖母」などから、その塗料としての金使いの巧みさは感じられる。

 ボッティチェリ展の感想はこちらになります。

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科学技術博物館「ワイン展」

wine-exhibition.com

 科学博物館で、挑戦している企画として期待して行きました……が。申し訳ありません、個人的には正直、期待外れでした。なぜ? テーマがこんなに面白いのに。
 科学館も博物館も、「もの」ありきなんだと思わされました。最初は、文章が並べられたパネルばかり。卒論生の発表を見せられているようで、げんなり。それくらい、みんな知っているって、と。なぜ、説明を長々読まされなければならなかったのか?

 途中、日本へのワイン受容のコーナーがありましたが、そのときの酒器が壊れたものばかりで「江戸時代だからそんな昔じゃないよね、どこかで壊れていない酒器を手に入れられなかったの?」とも不思議に思う。

 ワインの起源の話は面白かったのですが、その起源の地図の写真を撮ろうとした人に、スタッフが制止していたのが意味不明。ガイドブックに書かれているからか? 私もあの起源のあたりが一番面白かったと思ったのですが。
 客層は、デートしているような人たちがが多かった。「しらなかったー」「おもしろーい」と楽しんでいらっしゃった様子。そう楽しまれているならば、私の目が汚れているのか?

 科学館であれば、ブツを見せてなんぼでしょう、と思うのです。ボトルやグラスによるワインの味わいの違いとか。お子さまが入る前提であるから、レストランでワインを楽しむコーナーを別料金で、別の場所で用意したのでしょうが、それでもね。会場とリンクする場で「なるほど」と思わせるようにして頂きたかった。これでは、酒造メーカーのウィスキー工場とか、ビール工場に敵うわけない。あの場はよほど、科学的に紹介してくれる。

 様々な制限がある中で……とは思うものの、こんな「科学とワイン」という垂涎のテーマでこれ? と感じてしまいました。私の見方が意地が悪いのは認めます。そして、来館者の方々がこの内容で喜ばれるのも認めます。でも、よい素材をテーマにして、この学生の学会発表的な表現は、天下の(と思っている)科学博物館さんが、どうにかできなかったのかと思い、泣けてくるのです。

世田谷文学館イベント『ひとり漫勉』:浦沢直樹

 世田谷文学館に行くために上京したのは、浦沢直樹氏ご本人が登場する『ひとり漫勉』の企画に応募したら、当選したからでした(そうでなくても行くつもりでしたが)。

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 ラッキーです。最近、浦沢氏はNHK

www.nhk.or.jp

 という番組を制作したり、今回の個展を開催したり、マンガ家としてマンガの啓蒙・教育活動に熱心なように見える。
 実際、今回のイベントも西原理恵子の「人生画力対決」のように、マンガ家の生描きを見るようなものなのかな、と思っていたら、そんな簡単なものではなかった。

 ネームの相談から、ペンの油を落とすためにライターであぶること、下書き、枠線のペン入れ、キャラ作り、ペン入れ、スクリーントーンを貼るまで(たぶんもっとあったな……)、マンガ家としての仕事の全行程を魅せて……見せてくれた。

 しかも「編集者役」なのだろうか。放送作家その他で大活躍する倉本美津留氏が、松本人志の『一人ごっつ』よろしく、声だけでツッコミを入れる。浦沢氏も、描きながらエンターテイナーとしてサービスして喋る方だが、倉本氏のおかげで、間が空かないイベントになった。
 書画カメラではなく、NHKの用意したハイスペックな画面(どうなっているかわからないが)で映し出したのも観客には嬉しかった。

 その後、サイン会まであり。会場に行くまで、知らなかった。もちろん、頂いてきました。

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 待っているとき、「話しかけて良いものか、迷惑か……」と並びながら悩んでいたのですが、サイン券*1の名前を見て、浦沢氏から「あら、こんにちは」と話しかけてくれました。えーーーーー、認識して頂いてたのか。その後、今回のは、ほぼ打合せなしだったんですよーどうでしたかーとかのお話を伺う(舞い上がっていてあまり覚えていません)。

 どこで覚えて頂けたのだろう、と思うとまずこれかなあ。毎日新聞の書評。毎日新聞の担当者さんが、あれこれやりとりして下さったし。

今週の本棚 内田麻理香・評 『MASTERキートン Reマスター』=浦沢直樹、長崎尚志・著

 もう一つは、事務所にお邪魔して、ライターとして書いたインタビュー。ただあれで顔か名前を覚えていただいたとは考えがたい。

#09-1:浦沢直樹(漫画家) (鏡の国のサイエンス)

 とにかくそのあたりはどうでも良い。素晴らしい企画を目の前にして、しかも憧れの人に自分の名前か何かを覚えて下さったことだけで、嬉しすぎる。

 しかし、サインは150人弱したのではないかな。イラスト付き、人の名前入りで、握手付きってどんな超人だ、と思ってしまう。

 参加者は、お土産に『BILLY BAT』と福砂屋コラボのカステラまで頂戴しました。贅沢すぎる。このサービス精神にもびっくりです。

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*1:丸がついているのは「浦沢先生の負担を減らすために、姓か名かどちらかを選んでください」と言われたため

浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」

 世田谷文学館で開催されている、浦沢直樹展「描いて描いて描きまくる」をみてきました。

 マンガ家の個展はそこそこ増えているとはいえ(過去に他のマンガ家の展覧会も観てきた)、浦沢氏のような圧倒的な原稿の物量で「魅せる」展覧会は初めてです。
 

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 浦沢氏の代表作品の一巻分の原稿を展示。初期から修正(ホワイトを使う)ことがほとんどないことがわかる。そして、没になったネームも見て、マンガ家の試行錯誤の足跡がわかる。尊敬します、これを見ただけでも。マンガ家って、ひとり何役を演じているんでしょうね。
 この展覧会の本は市販されています。

 

 

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 1階には、浦沢作品の各キャラクターのパネルが。

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ケンヂとのツーショット。こんな機会があるならば、もっと着飾ってくればよかったー。

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 お布施もしてきました。でも「おかえり。」のクリアフォルダーとか、ヨハンの目のアップとか、使い途がわからん。とにかく自分で楽しもう。
 最近、浦沢直樹氏はマンガを描くだけでなく、NHKの漫勉とか、この展示とか

www.nhk.or.jp

 で、マンガをメタに見て、啓蒙活動に取り組んでいるように見える。そう思うと2倍3倍に楽しめる展示です。

 今回、浦沢直樹展関連企画「トーク『ひとり漫勉』」に申し込んで、ラッキーにも当たったので行ってきたのですが、このイベントの完成度も素晴らしかった。その話は別エントリーで。

 

 

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