「ボッティチェッリ展」東京都美術館
現在、展示中の東京都美術館の「ボッティチェリ展」に行ってきました。
2-3 年前、初めてウフィッツィ美術館で「春(プリマヴェーラ)」と「ヴィーナス誕生」の煌びやかさを見て驚きました。教科書にも載っている絵なので、皆さんご存じでしょう。実物を見た同行していた人たちと「名画にはオーラがあるんですかねえ」と うっとり佇んでいたのですが。
そして、昨年末、再びこの両作品を見る機会があった。一緒に見ていた人が「こんなすごい画家だったのか(超偉そう)」とのコメントを。たぶん、金の使い方が繊細で上手なのでしょう。印刷するとわからないけど、その使われた金は実物だと光と色の両方で美しく見える。印刷物では光はわからないから。やはり、アウラは印刷物では失われるんですよ……。
ボッティチェッリはメディチ家お抱えだったから、おそらく使っている画材も高価だったのでしょう。
この展示は最初に、「ラーマ家の東方三博士の礼拝」をどーんと。
あれ、今回の展示の見どころだったのでは? その絵を最初に持ってきて良いのかなと余計な心配をしてしまったが、あれは三博士をメディチ家の人になぞらえて描いているから、メディチ家とボッティチェリの関係を表現すのに最高の絵ではある。実際、素晴らしい絵だ。右端にいるのがボッティチェリと言われている。
そして、このサムネイルにある聖母子像。
ボッティチェリならではの美人のマリア様(でも、基本、キリストに対して慈愛を注ぐ表情を描かないらしい)に、アレゴリーの使い方が面白い。幼いキリストが、茨の冠と、釘という将来を暗示させるものを、金で綺麗に描くという。
あと、学問好きはたぶん「書斎の聖アウグスティヌス」に萌えるかなあと。
ボッティチェリのコーナーの前後に、師匠と弟子の絵をはさんでいるんだけど、まあこれはこれで。
驚いたのは、ボッティチェリがサヴォナローラに傾倒したあとのものがまるで魅力を失っているところ。禁欲的な絵なんて、ボッティチェリじゃないよー。サヴォナローラは芸術を破壊したか! と思ったけど、ちょうどパトロンであったメディチ家の衰退の時期と重なっているのね……。
やはり、貧しさがたたったか。メディチ家の財産あっての、キラキラしたボッティチェリの才能なのでしょうね。
ちなみに、あの有名な「春」「ヴィーナス誕生」は展示されていません。それでも行く価値はあるかな、と。
予習としては、今号の『芸術新潮』が優れています。今回、展示されていない作品を含めているし、背景も丁寧に解説してくれている。