『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』村松秀、早乙女ケイ子著
Eテレで放送されている「すイエんサー」を作ったエグゼクティブプロデューサー、村松秀氏の著。
本当は、書評で取り上げたいくらいなのですが、私自身が「すイエんサー」に何回も出演させていただいており、今回の本も名前が出ていて数項目で多少関わっているので、利益相反を恐れてブログでの紹介になってしまいました。
女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか? (講談社現代新書)
- 作者: 村松秀,五月女ケイ子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/03/16
- メディア: 新書
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Kindle版も出ています。
女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか? (講談社現代新書)
- 作者: 村松秀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/03/25
- メディア: Kindle版
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「すイエんサー」で披露してきた科学的思考法『グルグル思考』を
- 疑う力
- ずらす力
- つなげる力
- 寄り道する力
- あさっての方を向く力
- 広げる力
- 笑う力
とまとめ、番組での躍動感とともに、科学の思考法および科学リテラシーの優れた解説本、というか教科書になっています。
そもそも「すイエんサー」という番組にパイロット版から関わることができて、その内幕を見ることができたのも貴重な経験でした。すイエんサーガールズには「台本がない」。彼女たちは、目の前の疑問に対して必死に取り組むことになる(彼女たちの早く帰りたーいという、本音込みで)。
私は、今まで科学番組に対してクイズ番組などで正答を提示する「科学の結果」だけを伝え、「科学の営みのプロセス」を紹介するものがないかもしれない……と思っていたので、村松プロデューサーのこの手法での番組作りには嬉しく思い、驚き、尊敬しました。
台本のないすイエんサーガールズたちが、「グルグル思考」をしながら、身近な、でもそういえばいつも不思議だなと思っていた疑問を解決する。視聴者は、彼女たちのグルグル思考を見ながら共に体験した気分になる。優れた科学番組です。
グルグル思考を積み重ねたすイエんサーガールズたちが、東大をはじめとする有名大学の学生との勝負に勝利できたのも、納得のいく話です(詳細は本書をご覧下さい)。このグルグル思考は、科学的思考法や科学リテラシー(その定義はあいまいですが)を身につけるのための本質を突いているのです。
大人も、子供にもぜひおすすめしたい一冊です。「すイエんサー」のコンセプトを知ることができます。
ちなみに、村松氏は世間を揺るがしたヘンドリック・シェーンの捏造問題を追った番組を作り、『論文捏造』と書籍化し、科学ジャーナリズム賞も受賞しています。硬軟どちらもいける、科学番組のプロデューサーです。
日経ビジネス『Priv.』寄稿
日経ビジネスが発行する"Priv.(プライブ)"に寄稿しました。2冊のサイエンスに関連する本を紹介するエッセイです。
大人の女性のためのクオリティー・ライフスタイルマガジン
と紹介されているように、日経の女性読者の中でもセレブな働く女性向けの広告誌だとか。何を書いたらよいものやら、と迷いましたが、フィレンツェつながりで「旅の楽しみを深める、科学視点の予習」として、2つの本を紹介しました。
それにしても美しい広告誌ですね。寄稿できたことを嬉しく思います。お手にとる機会がありましたら、ぜひご笑覧下さい。
日本経済新聞:書評『マンモスのつくりかた』
本日の日本経済新聞に、書評が掲載されています。
対象本は、こちらです。
マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる (単行本)
- 作者: ベスシャピロ,Beth Shapiro,宇丹貴代実
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/01/25
- メディア: 単行本
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著者は古生物DNAの研究者で、マンモスなど絶滅種を「脱絶滅」させる研究をしている。この本の読みどころは色々あって、古生物DNAの実験やフィールドワークでの様子もいきいきと描かれているし、生命科学について丁寧に説明してくれているので良い教科書にもなっている。
最も特筆すべき点は、単純に脱絶滅だけを視野に入れていないこと。「神になってよいものか」と自問自答し、復活した際の生態系への影響、野生に放つことができるのか……と、慎重に考えていることだ。科学技術が世に放たれたときの先も考える、科学者の姿勢は尊敬する。
マンモスが復活すると考えると胸が躍るが、その想いだけでは解決できない問題が山積しているのだ。
Ancient DNA -- What It Is and What It Could Be: Beth Shapiro at TEDxDeExtinction
著者のベス・シャピロのTEDxでのトークはこちら。
毎日新聞「今週の本棚」『医学の歴史』書評を寄稿
本日付の毎日新聞の書評欄に、書評が掲載されています。
対象本はこちら。
本文で「物足りなさを感じた」というのは、褒め言葉でして、入門書は物足りなくて人の知的好奇心をくすぐるのが役目だと思っています。とはいえ、本書は複雑極まる医学の歴史に筋を通してまとめた構成力が素晴らしい。
翻訳は id:akihitosuzuki 鈴木晃仁氏と鈴木実佳氏。本文を読んで「あれ?」と思うところがあったので(2カ所だけですが)、原文をKindle版で購入して確認してみたのですが、誠実かつ明快な翻訳でした(というか原文も良いですが、翻訳のほうが、よりわかりやすい。単に私が読めていなかっただけ)。本書は、訳者のおふたりにも恵まれて、良書になっているのだと思わされます。
この本は、丸善出版の「サイエンスパレット」シリーズに含まれます。新書だと侮ることなかれ。オックスフォード大学出版局の"Very Short Introductions"シリーズを翻訳し、さらに日本版の書き下ろしを加えた理系新書シリーズです。もとのシリーズが40カ国以上で翻訳出版されているのだから定評がある。書評していませんが、こちらもおすすめ。日本発。
そして、同じく日本発としては、
こちらを過去に書評しています。
今回ご紹介した『医学の歴史』を含め、「さっと読めるようで、実は深い」入門書が多いので、ぜひ。
『Dream Navi』2006年4月号:インタビュー掲載
『芸術新潮』1月号:江口寿史&ボッティチェッリ特集
1月号の『芸術新潮』は、第1特集が江口寿史、第2特集がボッティチェリだ。現代の日本の美人画(美少女画)と、ルネッサンスの美人画の名手の絵の対決である。
江口寿史の描く美少女はひたすらうっとりするばかりで、同性が見ても不快に感じない。ああ、かわいいな、きれいだなと思うばかり。最近、地域興しとしていくつかの行政が、「美少女」(あえて括弧付きにする)を売りにしたイラスト、アニメを制作しているが、次元が違う。
ボッティチェリの特集は、東京都美術館で1月16日から4月3日まで開催されている「ボッティチェリ展」にあわせたものだ。ボッティチェリの描く美人画も、おそらく同性が見ても素直に美しいと思うだろう。彼の描く美人画が、特にマリア像が「うつろな顔」をしていることを指摘している。なるほど。
東京都美術館には、残念ながらかの有名な「春(プリマヴェーラ)」や「ヴィーナス誕生」はない。でも、「書物の聖母」などから、その塗料としての金使いの巧みさは感じられる。
ボッティチェリ展の感想はこちらになります。