内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞『今週の本棚』書評『専門知を再考する』

 毎日新聞に、『専門知を再考する』の書評を寄稿しています。

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 さまざまな「専門家」がメディアに登場するいま、専門とは? 専門家とは? を考える助けになる本です。

 書評では触れませんでしたが、コリンズとエヴァンズは「メタ専門知」と呼ぶ知のことも精緻に検討しています。ある分野の専門知がない場合でも、「メタ専門知」を使って、その専門家を鑑定できる場合がある、とも。

 ただ、メタ専門知は見目物腰や社会的地位に基づく場合、その「専門家」について誤った判断をしてしまう問題点があることも指摘。 ……あるある過ぎる。

 コリンズの他の著作としては、『我々みんなが科学の専門家なのか?』H.コリンズ著、鈴木俊洋・訳(法政大学出版局)の書評も寄稿しています。コリンズの主張としては「我々みんなが科学の専門家では「ない」」という内容になります。

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専門知を再考する

専門知を再考する

 

 

 

朝日新聞にコメントが掲載されました

 朝日新聞の以下の記事に、私のコメントが掲載されています。

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それでも日常生活が戻るにつれ、どうしても危機感が薄れてしまう。科学コミュニケーションが専門の内田麻理香・東京大特任講師は、現在の状況は「なぜかうまくいっているだけ」とし、「第2波は必ず来るものとして備えなければならない。その上でできるだけ波の山を小さくすることが大切」と話す。  第1波では、感染した人が差別されるケースもあった。内田さんは「それでは感染したことを隠すようになり、対策できないことでかえって感染が広がりかねない」と指摘する。

 

朝日新聞「論壇委員が選ぶ今月の3点」5月

 朝日新聞の論壇時評の欄に、「論壇委員が選ぶ今月の3点」が掲載されました。

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 私の担当する、科学技術からは以下の3点です。

▽中澤港、川端裕人「新型コロナ、本当のこと 『研究室』に行ってみた特別編 神戸大学」(Webナショジオ、5月12日~)

<評>作家・科学ジャーナリストによる、公衆衛生学の専門家へのインタビュー連載。ウイルスの性質やPCR検査数についての議論の解説などが、一歩引いた立場からわかりやすくまとめられている。現時点で読める適切な「教科書」だ。

natgeo.nikkeibp.co.jp

▽「独『科学アカデミー』がコロナで大活躍」(選択 5月号)

▽小野昌弘「『夢遊病国家』から脱却せよ 英国の背中から何を学ぶか」(Voice 6月号)

Voice 2020年6月号

Voice 2020年6月号

  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: Kindle
 

  今回、「3点」に入れることはできませんでしたが、

玉手慎太郎「感染予防とイベント自粛の倫理学」『現代思想』5月号

も非常に勉強になりました。公衆衛生倫理学の立場から、イベント自粛要請について「前向き責任」「後ろ向き責任」と責任の規範をわけて検討した論考です。

 「自粛警察」は、個人の行動を責めるという、まさに後ろ向き責任を問うものでしょう。  感染症対策は前向き責任(当人の置かれた状況に応じて、将来ある特定の行為を遂行することを望ましいとみなす規範)としてとらえるべき、という玉手さんの主張は、今後広く共有されるべき指針だと思います。

青土社 ||現代思想:現代思想2020年5月号 緊急特集=感染/パンデミック

 

『科学技術社会論研究』査読論文掲載

 『科学技術社会論研究』に投稿した論文が出ました。

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 私の博士論文の第3章で議論したシンプルな提案を(でも、私の博論のハイライト?だとも思っている)、科学哲学が専門である原塑さんとの共著により大幅に書き直した内容になっています。

内田麻理香・原塑(2020)「欠如モデル・一方向コミュニケーション・双方向コミュニケーション 科学技術コミュニケーションにおける中核概念の再配置 」『科学技術社会論研究』 18, 208-220.

 この論文の発想の元となったのは、東日本大震災後の科学コミュニケーターに対する様々な批判です。「だから、一方向の科学コミュニケーションはダメ」「だから、科学の楽しさ、美しさをうったえる科学コミュニケーションはダメ」という議論が少なからずありました。双方向のコミュニケーションは手段であって、目的ではない…と考え、「欠如モデル」と「コミュニケーションの方向性」を切り分けて論じた内容になっています。

 お読みになりたい方は、PDFをお送りしますので、ぜひご連絡ください。

市民参加を超えて (科学技術社会論研究 第18号)

市民参加を超えて (科学技術社会論研究 第18号)

  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

朝日新聞「論壇委員が選ぶ今月の3点」4月

 朝日新聞の論壇時評の欄に、「論壇委員が選ぶ今月の3点」が掲載されました。

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 科学技術からの3点は、以下の通りになります。今年度から、3点のうちひとつに、委員からの<評>も掲載されることになりました。

 

▽ヤンゾン・ファン「コロナウイルス陰謀論感染症危機と米中対立」(フォーリン・アフェアーズ・リポート 4月号)

 

 <評>新型コロナは生物兵器だと示唆する「陰謀論」がネット上では広がる。著者は、その可能性は極めて低いと論じた上で、陰謀論を引き起こす米中間の不信こそが問題だと主張する。

 

▽カーレン・ハオ「プライバシーか?公衆衛生か?新型コロナで揺れるAI規制のゆくえ」(MITテクノロジーレビュー、4月1日)

www.technologyreview.jp

▽NHKスペシャル「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防~感染拡大阻止 最前線からの報告~」(4月11日放送)

www.nhk.or.jp

 新年度初の朝日新聞・論壇委員の合評会は、全員Zoomで参加という形式になりました。一度、休憩は入りましたが5時間半にわたって議論(ほぼ雑談なし)!  ここで高重さんが書かれているように「密度の濃い」議論となりました。

digital.asahi.com まだまだ慣れないですが、オンライン下でできること、探っていかなければいけませんね。

毎日新聞『今週の本棚』書評『ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿 科学者たちの生活と仕事』

 毎日新聞に、書評を寄稿しました。

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 ルネサンス期から17世紀の科学者の多くは、パトロンのもと研究活動をしていました。今の新型コロナウイルス対策に巨額な資金を投下している、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の活動は、現代のパトロンとしてのお手本に見えます。

 ニュートンが生涯に成し遂げた業績の大部分は、ペストの流行期に生まれました。ニュートンは大学入学当初、学内で働く代わりに授業料を免除される免費生で忙しかった&大学になじめなかった、ようです。ペスト流行で実家に避難することになったのですが、ニュートンの場合、大学よりも避難先の故郷の方が能力を発揮できる環境だったとのこと。

 今の大学もオンライン化が急速に進んでいますが、この環境でこそ力を伸ばす学生さんもいるかもしれません。

 また、20世紀の物理学者、ヴェルナー・ハイゼンベルクも「避難中」にめざましい成果を挙げたひとりです。ハイゼンベルグは枯れ草熱(花粉症)の避難時に、行列力学の業績を残しました。不確定性原理を発見したのは、師匠ニールス・ボーア(議論好きでうるさい)がスキー旅行で離れていた最中です。ハイゼンベルクはボーア宅で下宿中だったのですが、師匠がいないときの「鬼の居ぬ間の洗濯」的な発見?
 科学者たちのこのような「裏話」は、拙著に書いていますので、ぜひ。

 

 

ガリレオの求職活動 ニュートンの家計簿 科学者たちの生活と仕事

東京大学『学内広報』寄稿

 東京大学の『学内広報』2019年3月の「インタープリターズ・バイブル」に「他分野/多分野との交流」と題したエッセイを寄稿しました。2019年度からつとめている、朝日新聞の論壇委員の模様と、科学技術インタープリター養成プログラムの類似について書きました。

東京大学 学内広報 NO.1532 | column

 全文は、こちらからご覧になれます。

science-interpreter.c.u-tokyo.ac.jp