毎日新聞「今週の本棚」『才女の歴史』書評を寄稿
本日の毎日新聞の「今週の本棚」に書評が掲載されています。今週は大書評(いつもより文字数が多い)で書いてます。対象本はこちら。
書評はこちらからも読むことができます。
今週の本棚:内田麻理香・評 『才女の歴史−古代から啓蒙時代までの諸学のミューズたち』=マルヨ・T・ヌルミネン著 - 毎日新聞
隣のページには、対象本の挿画にあった、ハーシェル兄妹の絵(カミーユ・フラマリオン)、ラヴォアジエ夫妻の絵(ナポレオンの肖像画で有名なダヴィッド、この絵も18世紀肖像画の最高峰と言われている)を入れていただきました。ありがとうございます。
さて、こちらの本。「女性教養人はどこに行ってしまったのか?」という疑問を抱いた元ジャーナリストの著者ヌルミネンが、古代から啓蒙時代までの諸学で功績を残した女性たちを魅力的に描いたものです。書き切れませんでしたが、読みどころ多し。注釈・引用文献等も含めると、500p近い鈍器本ですが、退屈しないで楽しめるかと思います。
ただやはり、ここに登場した女性教養人たちは環境が恵まれています。裕福だったり、親戚やパートナーが学問を修めることを応援していたり、など。特に父親が理解がある例が多かったように思います。
また、書評にも書きましたが、学問、特に自然科学の発展とキリスト教の関連は深い。宗教改革後、科学革命が進んでいったのは偶然ではないでしょう。一方で、中世では女子修道院が学問を修める場となっており、図書館も兼ねていたという歴史も興味深い。
アレクサンドリアのヒュパティアも書評中に取り上げましたが、彼女が天文学、数学、哲学で功績を残したのは確かなようですが、ギリシア天文学を引き継いでいるので、地動説ではなく天動説支持者です。映画「アレクサンドリア」を見て「あの時代に地動説!」「楕円軌道まで思いついていたのかー」との誤解が多いかもしれませんが、演出です。
こちら、図版に掲載されたラヴォアジエ夫妻の絵。この絵は大好きで、「ニコニコ学会β〜ファイナル」の時に、ニコファーレの全面周囲LEDの画面に投影をお願いした絵のひとつ。
こちらのハーシェル兄妹の絵は、『才女の歴史』に登場していたものとは違うのですが、Wikipediaで見つけました。リトグラフ。作者はわからないのですが。ただこれだと、彼女も天文学者というよりは、ハーシェルにお茶を入れるだけのように見えてしまいますね。