仕事に関係あるので、『アレクサンドリア』を観賞。今はネット上で映画が購入できるので、楽になりましたね。
Amazonビデオにもあるようです。
4世紀のエジプトのアレクサンドリアを舞台にし、実在した女性天文学者、数学者、哲学者として活躍した実在する女性、ヒュパティアをヒロインにした歴史ドラマです。
この映画はいろいろな視点から見ることができるのが興味深い。ギリシア科学が繁栄していたアレクサンドリアという都市の様子、そのアレクサンドリアで天文学などの教鞭をとり研究していた女性が1500年以上も前にいたこと、そして宗教の異教徒への残忍さ……ヒュパティアもキリスト教徒ではない魔女という理由で惨殺されます。
2時間以上の映画でしたが、あっという間に思えるくらい楽しめました。ただ、気になったのは天動説を採用していた(プトレマイオスの研究と講義をしていた)にも関わらず、地動説の立場をとっていて、さらに、さらにヒュパティアが「地球は楕円軌道で太陽の回りを運行している」と閃いてしまうという脚色。さすがに……とは思ったが映画に対して史実がどうこう言うのは野暮だしね。
この点については、 id:saebo さんの評が的確でしょう(宗教の描き方に関する解釈も含め)。
おそらくかなりちゃんと歴史を勉強した上でコンセプトのために意図的に史実を曲げている。(中略)ヒュパティアが1200年も後のケプラーの業績を先取りしていたという話になるところがリアルではないということで鑑賞会では不評だったのだが、これは明らかにヒュパティアとガリレオとかジョルダーノ・ブルーノみたいに教会に弾圧された科学者とヒュパティアを重ねようとする意図の結果で(途中で「地球が動くとはバカな…」みたいなことを司教が言う場面がある)、カトリック教会批判を打ち出すために故意にやっていることである。この点、コンセプトとか意味不明で「なんかおもしろそうだから」みたいな感じで史実を変えまくった『もうひとりのシェイクスピア』とは心意気が違う。
実際、キリスト教と科学の関係は切っても切れない(それは現在も米国で進化論ではなく創造論を信じる人が多いのと同じだ*1)。そのようなコンセプトがあれば、史実に対してあれこれ言うつもりもない。
*1:2015年でようやく、米国で進化論を信じる人が過半数越えしたという調査があったが。