毎日新聞「今週の本棚」『フランシス・クリックー遺伝暗号を発見した男』
毎日新聞に書評掲載です。
今週の本棚:内田麻理香・評 『フランシス・クリック−−遺伝暗号を発見した男』=マット・リドレー著
対象本はこちら。今回、初めての大書評(2,000字。普段の書評は1,400字)で苦労しました。バランスとるの、難しい。
お騒がせのワトソンの方は有名ですが、いまいち目立たない存在のクリック。その自伝を赤の女王 性とヒトの進化 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)などで知られる、名サイエンスライター、マット・リドレーが描きます。
面白くないわけがない。最近出た
- 作者: ジェームズ・D.ワトソン,アレクサンダーガン,ジャンウィトコウスキー,James D. Watson,Jan Witkowski,Alexander Gann,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/05/29
- メディア: 単行本
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と、 もはや古典のこちら
- 作者: ジェームス.D・ワトソン,江上不二夫,中村桂子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/11/21
- メディア: 新書
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も参照しながら読みました。
『二重らせん』出版に至るトラブル(クリックらが反対した)というのは事実らしい。二重らせん発見に至るプロセスも、まあ人間くさいというか、どたばたしていてきれいなものではありませんが、この出版に関するいざこざもみっともないですね。まあ、登場人物がクセがありすぎる。
ロザリンド・フランクリンは、その後、クリック夫妻と仲の良い交流があったらしい。彼女の功績をどう評価するかは、難しいでしょう。いろいろな文献を照らし合わせないといけないでしょう。
彼は生涯にわたり「一研究者」であり続けたが、新しい分野に取り組むときは、真摯に自分自身を再教育した。長期間にわたり、一つの問題を解こうとする粘り強さ。他人から見ると「最高につまらない論文」まで読み込んでいたという。本書全体を通じて、クリックは口が悪く、尊大で嫌みな人物という面も うかがい知れるが、科学に対しては終生、謙虚であり続けた。この学ぶことへの情熱も、彼の天才性を形作っていたのだろう。
クリックの「ただものでなさ」は科学への謙虚な姿勢から作られたことがわかる書です。