内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

『科学者の目、科学の芽』刊行

 

科学者の目、科学の芽 (岩波科学ライブラリー)

科学者の目、科学の芽 (岩波科学ライブラリー)

 

  岩波書店で編集された『科学者の目、科学の芽』に、私の拙文も掲載されています。36編のそうそうたるメンバーの端っこに載せていただいて幸いです。私のタイトルは「マリー・キュリー再訪から」です。

 掲載者およびタイトルは以下の通りです。

第Ⅰ部 見えるものと見えないもの
・土地の色・影の色 三浦佳世 人魂の行方 加藤 真 垣間みる潜在的な心――日常の隙間から 下條信輔
・路上のカニ 佐藤正典
・誰が光をみたか 木村龍治
・歌の科学,科学の歌 円城 塔
チベットの聖地を巡りながら 小林尚礼
・愛の矢 千葉 聡 見えないモノを視る――ブラックホールの色彩と異星の夕焼け 福江 純
・立場によって違って見える世界 佐藤克文
・かみひとえ 時枝 正

第Ⅱ部 出会いと発見
・菜の葉にとまれ 中村桂子
・酒と氷とリケジョとリケジィ 長沼 毅
・汽車の汽笛は本当にポッポーか?――オノマトペと「世界を知覚する網」 下條信輔
・黒いものは黒い 川上和人
ブラックホールに落ちるとどうなるか? 大栗博司
・カウントダウン 三浦佳世
屋久杉の年輪,岩石の磁気と宇宙現象 江沢 洋
マヤ文明――出会いと日常生活 青山和夫
・二番煎じの研究 木村龍治
・太陽からの贈りもの 川上紳一
・変容する形態――比較形態学のすすめ 倉谷 滋
・「路上観察学」的アンテナを張りめぐらす 三中信宏
・あの日,カラスは応えたのか 松原 始

第Ⅲ部 科学と社会 驚きから普遍へ
・科学史から見た科学の魔力 三村太郎
・海と魚と環境教育 益田玲爾
・イノハナ茸 小澤祥司
・夏のはじめに 大河内直彦
・芸術の一ジャンルとしての科学 岩崎秀雄
・生存のジレンマ 木村龍治
・自然と人間性 八代嘉美
マリー・キュリー再訪から 内田麻理香
・日常からの超常授業 植木不等式
・科学は危機なのか? 高井 研
・タクシーが教室,運転手は先生――市民科学から庶民科学へ 安渓遊地
寺田寅彦を「活用」する 鎌田浩毅

 この豪華メンバーの本に掲載させていただいたことを嬉しく思います。科学を多面的に見つめるのに適切で素晴らしいエッセイが揃っているかと思います。どうぞよろしくお願いします。

お花見

f:id:kasoken:20160525225514j:image  仙台のお花見の名所、榴岡公園で簡単なお花見。ここの公園は色々な種類の桜があるので、満開のもあれば、まだまだこれから…というものも多い。それでも見事でした。三脚持って写真撮っている人も結構いて。 ブルーシートで番をしている人がたくさんいたから、これからごった返すんだろうな。こちらはささやかに、プレミアムモルツの桜ラベルのだけ(というか、その前に小籠包食べ過ぎた。屋台も出ていたけど食べる気がせず)。 f:id:kasoken:20160525225536j:image  

毎日新聞書評「今週の本棚」寄稿『中谷宇吉郎 雪を作る話』『寺田寅彦 科学者とあたま』

 本日発売の毎日新聞に、書評を寄稿しています。

内田麻理香・評 『中谷宇吉郎 雪を作る話』『寺田寅彦 科学者とあたま』

 書評対象本はこちらです。

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

 

 

寺田寅彦 科学者とあたま (STANDARD BOOKS)

寺田寅彦 科学者とあたま (STANDARD BOOKS)

 


 最初は、中谷宇吉郎の本だけを書評しようと思っていたのですが、彼のことを書いていると師であり友人であった寺田寅彦に触れないわけにはいかない。そうなると、中谷の随筆を書評しているのか、寺田の随筆を書評しているのかわからなくなってしまい、担当記者さんに「中谷だけにするか、寺田も入れるかご判断お願いします」とお任せしたところ、二冊の本の書評にして下さった。ここでタイトルに中谷の本を入れて下さったところが担当記者さん、さすが! と。

 私は、中学生の頃から柿の種 (岩波文庫)を愛読していて(私がいま、こんな仕事をしているのは寺田寅彦の影響も大きい。人生を方向付けた人でもある)、寺田寅彦ファンなのです。今回は中谷宇吉郎の評に徹しようと思ったのですが「あれ、寺田も同じようなこと言っていたような……」と改めて読み返してみると、この二人の関係を切って書評してしまうのはもったいない、と。

 でも、中谷宇吉郎は単なる寺田のお弟子さんではなく、彼なりのオリジナリティがある。おそらく文学的表現に優れているのは師の寺田だろう。しかし、中谷の科学者としての営みや、科学的な描写は丁寧で、かつわかりやすい。これらの点においては師を超えていると言える。しかし、問題意識は共通していて(特に、科学教育)、互いに共鳴しあっているところから、師弟関係、いや友人関係の深さを見出すことができる。

 科学に対する興味は自然に対する敬意によって養われる。これは、子供の頃に接した奇想天外なものや、化物などに対して抱かれたりするというのが両者の共通した考えだ。当時の科学教育は、知識の伝達を大事にするあまり、その手の非科学的なものを子供から排除しすぎではないだろうかと懸念する。これは今の科学教育にも通じる示唆であろう。

 このあたりは、科学コミュニケーションや科学教育に携わる者は傾聴に値する両者の指摘だろう。化物だのいわゆる「科学的でない」ものを体感してこそ自然への興味が湧き、科学への興味が養われるというのが両者の主張だ。

 それにしても、平凡社が「STANDARD BOOKS」がこのようなレーベルを新たに刊行したことが個人的に嬉しい。

科学と文学、双方を横断する科学者・作家の珠玉の作品を集め、一作家を一冊で紹介します。

 と述べ、「知のスタンダード」となる文章を提案するという。今後の刊行も楽しみ。

 

拙著『面白すぎる天才科学者たち 世界を変えた偉人たちの生き様』刊行

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  2007年に刊行された

恋する天才科学者

恋する天才科学者

 

  が、講談社+α文庫として発売されました。文庫版、とはいえ、文章全体を大きく書き直し、断頭台の露と消えた天才化学者ラヴォアジエも新たに収録し、新装開店です。

 

  Amazonでの説明はこちら。

女嫌いで喧嘩好きだったニュートン、女癖が悪かったアインシュタイン、現代数学をつくった不遇の天才ガロアは恋愛沙汰で決闘死、蘇る愛とロマンに生きた シュレーディンガー……歴史に残る偉大な科学者たちの人生は、強烈すぎて面白すぎる! 偉大すぎてダメすぎる巨人たちの激烈な人生を、その人間くさい素顔 とともに、人気サイエンスライターがコミカルに紹介。こんな偉人伝、読んだことがない!


 帯の絵を描いて下さったのは

決してマネしないでください。(1) (モーニングコミックス)

などで活躍中の漫画家、蛇蔵さん。ありがとうございます。

 単行本のときの川名潤さんの装丁も素敵でしたが(今さらながら、贅沢させていただいたな……としみじみ)、どちらもお気に入りです。

 そして、単行本のときにもお世話になったイラストレーター、西谷直子さんが、いくつも本文中のイラストを描き直して下さいました。こちらも感謝です。

 初めての単行本化は嬉しいです。文章に関しては、かつてのダメダメなものをかなり読みやすくしたつもりです。どうか、ご愛顧よろしくお願いします。
 

『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』村松秀、早乙女ケイ子著

 Eテレで放送されている「すイエんサー」を作ったエグゼクティブプロデューサー、村松秀氏の著。
 本当は、書評で取り上げたいくらいなのですが、私自身が「すイエんサー」に何回も出演させていただいており、今回の本も名前が出ていて数項目で多少関わっているので、利益相反を恐れてブログでの紹介になってしまいました。

 Kindle版も出ています。

すイエんサー」で披露してきた科学的思考法『グルグル思考』を

  • 疑う力
  • ずらす力
  • つなげる力
  • 寄り道する力
  • あさっての方を向く力
  • 広げる力
  • 笑う力

とまとめ、番組での躍動感とともに、科学の思考法および科学リテラシーの優れた解説本、というか教科書になっています。

 そもそも「すイエんサー」という番組にパイロット版から関わることができて、その内幕を見ることができたのも貴重な経験でした。すイエんサーガールズには「台本がない」。彼女たちは、目の前の疑問に対して必死に取り組むことになる(彼女たちの早く帰りたーいという、本音込みで)。

 私は、今まで科学番組に対してクイズ番組などで正答を提示する「科学の結果」だけを伝え、「科学の営みのプロセス」を紹介するものがないかもしれない……と思っていたので、村松プロデューサーのこの手法での番組作りには嬉しく思い、驚き、尊敬しました。
 台本のないすイエんサーガールズたちが、「グルグル思考」をしながら、身近な、でもそういえばいつも不思議だなと思っていた疑問を解決する。視聴者は、彼女たちのグルグル思考を見ながら共に体験した気分になる。優れた科学番組です。

 グルグル思考を積み重ねたすイエんサーガールズたちが、東大をはじめとする有名大学の学生との勝負に勝利できたのも、納得のいく話です(詳細は本書をご覧下さい)。このグルグル思考は、科学的思考法や科学リテラシー(その定義はあいまいですが)を身につけるのための本質を突いているのです。

 大人も、子供にもぜひおすすめしたい一冊です。「すイエんサー」のコンセプトを知ることができます。

 ちなみに、村松氏は世間を揺るがしたヘンドリック・シェーンの捏造問題を追った番組を作り、『論文捏造』と書籍化し、科学ジャーナリズム賞も受賞しています。硬軟どちらもいける、科学番組のプロデューサーです。

論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

 
論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

 

 

日経ビジネス『Priv.』寄稿

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 日経ビジネスが発行する"Priv.(プライブ)"に寄稿しました。2冊のサイエンスに関連する本を紹介するエッセイです。

 大人の女性のためのクオリティー・ライフスタイルマガジン

と紹介されているように、日経の女性読者の中でもセレブな働く女性向けの広告誌だとか。何を書いたらよいものやら、と迷いましたが、フィレンツェつながりで「旅の楽しみを深める、科学視点の予習」として、2つの本を紹介しました。

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 それにしても美しい広告誌ですね。寄稿できたことを嬉しく思います。お手にとる機会がありましたら、ぜひご笑覧下さい。

 

日本経済新聞:書評『マンモスのつくりかた』

 本日の日本経済新聞に、書評が掲載されています。

www.nikkei.com

 対象本は、こちらです。

マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる (単行本)

マンモスのつくりかた: 絶滅生物がクローンでよみがえる (単行本)

 

  著者は古生物DNAの研究者で、マンモスなど絶滅種を「脱絶滅」させる研究をしている。この本の読みどころは色々あって、古生物DNAの実験やフィールドワークでの様子もいきいきと描かれているし、生命科学について丁寧に説明してくれているので良い教科書にもなっている。
 最も特筆すべき点は、単純に脱絶滅だけを視野に入れていないこと。「神になってよいものか」と自問自答し、復活した際の生態系への影響、野生に放つことができるのか……と、慎重に考えていることだ。科学技術が世に放たれたときの先も考える、科学者の姿勢は尊敬する。

 マンモスが復活すると考えると胸が躍るが、その想いだけでは解決できない問題が山積しているのだ。


Ancient DNA -- What It Is and What It Could Be: Beth Shapiro at TEDxDeExtinction

 著者のベス・シャピロのTEDxでのトークはこちら。