毎日新聞書評:今週の本棚『ガリレオ裁判』
毎日新聞に書評掲載。「それでも地球は動いている」…などの言葉が残され、宗教と戦った科学のヒーローとして語り継がれるガリレオ・ガリレイ。
今世紀に入って、その宗教裁判の記録から、概要が明確になってきました。推理小説のような一冊です。
今週の本棚 | 内田麻理香・評 『ガリレオ裁判−400年後の真実』=田中一郎・著 - 毎日新聞
「宗教」対「科学」の対決ではなかったことは確かであるようです。ガリレオは信仰心の強い人物で、破門はされたくない。『天文対話』では地動説を論駁する章を付け足しても良い、とまで言ったとのこと。むしろ、ガリレオと親しかった教皇たちが、この裁判を穏便に済ませようと働きかけていたと言えるでしょう。キリスト教は科学の歩みを止めるつもりはなかったことが窺えます。
この写真は、ガリレオが改良して、天体を見た望遠鏡。本書でガリレオの英雄らしさは少し失われるかもしれませんが、それでも望遠鏡を空に向ける、という発想自体に改めて感心します。
「第9回ニコニコ学会β〜FINAL〜」で座長
19日に開催された「第9回ニコニコ学会β」の第3セッションで座長を務めました。
タイムシフトでご覧になることができます。
座長として、富野由悠季氏と瀬名秀明氏のお二人のブッキングができたことでもう、役目は果たしたかなあーとか甘いことを考えていましたが、そうはいきません。当たり前です。アシスタントについて下さった、伊藤さんと渡邉さんの超強力なサポートのおかげで、なんとか当日までたどり着きました。
あとは、富野監督と瀬名先生のおふたりのクレバーさに助けられました。
一応、クロストークの内容としては
・科学の業、科学者の業
・科学の発展で、人間性はどのように変わっていくのか
・発展する科学と、どう付き合うべきか
というぼんやりした難しいテーマを3つ用意したのですが、臨機応変にお話して下さって助かりました。さすが、科学やテクノロジーをテーマに扱って、作品を作り続けたクリエイターのお二人です。先を見据えたお話が伺えたと思います。事前の打ち合わせや、楽屋ではもっと放送事故になるような話になる? と冷や冷やしていましたが、さすがエンターテイナーでもあるお二人です(楽屋裏のトークは楽しかったんです。これは、関係者であることの醍醐味です)。
ニコファーレという会場なので、全周囲画面を用意したのですが、リハーサル時、画像が重すぎて、パソコンのほうがダウンしてしまいました。スペックの高い渡邉さんのパソコンでなんとか対応できたのですが。
(ナポレオンの絵で有名な)ダヴィッドのラヴォアジエ夫妻の絵とか、フェルメールの「天文学者」の絵も使ったので、こちらもお楽しみ頂けたらと。
私の冒頭のセッション説明の画像も置いておきます(緊張しすぎて放送事故レベルで申し訳ない……)。
とにかく、登壇させていただいたのは嬉しく貴重な体験でした。どうもありがとうございます。富野監督、瀬名先生にお礼を申し上げるとともに、優秀すぎる運営の皆様、スタッフの方々にも感謝いたします。本当にありがとうございました。
最終回用の登壇者のロゼット、いろんな色が用意されていたのですが、紺色使わせて頂きました。富野監督は水色、瀬名先生は緑色でした。
毎日新聞「今週の本棚」『2015 この3冊』
本日の毎日新聞に、書評員が「今年の3冊」を選ぶ欄に寄稿しました。毎年、選ぶの難しいですね。今回選んだ3冊はこちら。今年は教養とか知性とかキーワードになりうるかな、と考えて選んだのがこちら。
「世界が滅んだあと」という本はSFでもアニメでも多く見られますが、復興したあとの設定が多い。これは「復興するまでにどう文明を作るか」というシチュエーションからはじめるのが面白い。日本経済新聞で書評しています。
2冊目は、
これは書評したかったのですが、タイミングが合わなかった。哲学・心理学・科学論などの研究者が、様々な角度から検討した本書は大きなヒントを与えてくれるはず。多くの人が寄稿しているので、拾い読みでも勉強になるはずです。
つい先日の、毎日新聞の鼎談書評で私が担当した本。
日本国憲法は、日本人の教養ではないだろうか。新進気鋭の木村草太氏が監修し、英語訳された日本国憲法を、名人芸を発揮する実力者である柴田元幸氏が、逆翻訳する。英語で読むと、日本国憲法の隠れた主語が明るみになる……など、様々な気付きがある。日本国憲法の成り立ち、両者の対談なども含めた贅沢な本です。
日本経済新聞:書評寄稿「食の未来のためのフィールドノート(上)・(下)」
日本経済新聞で書評を寄稿しています。
対象本はこちら。
食の未来のためのフィールドノート・下:「第三の皿」をめざして:海と種子
- 作者: ダン・バーバー,小坂恵理
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2015/09/18
- メディア: 単行本
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下巻の表紙は、魚です。
途中まで、副題にある「第三の皿」の意味がぼんやりしていたのですが、著者はひたすら食の持続可能性を考えている。まず土地を大事にし、美味しい形で提供する。
自分の食生活も反省させられますね……。
毎日新聞「今週の本棚」<鼎談書評>「日本国憲法の新訳から考える」
毎日新聞で、鼎談書評が掲載されています。「日本国憲法の新訳から考える」をテーマにして、比較文化の張競さん、憲法学の木村草太さんと。ウェブからは見えないようなので、紙面でぜひどうぞ。読み応えあります。
取り上げた本は
- 作者: C.Douglas Lummis,池田香代子,C.ダグラスラミス
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2002/12
- メディア: 単行本
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の3冊です。
司会の池澤夏樹さんに「張さんと内田さんは非専門家代表として今回お願いしました」と。とはいえ、張さんは翻訳に詳しい。超ど素人は私だけだ。おかげさまで勉強になりました。というわけで、私はひたすら素人的な質問を。「天皇に基本的人権はあるのですか」「憲法で同性婚は合憲ですか」「9条のような条項は他の国ではどうなんですか」などなど。
しかし、英文と対比させると気がつかなかったことがあぶりだされてきますね。勉強になるありがたいお仕事でした。和田誠さんにイラストにしていただけたのも嬉しい!
「第9回ニコニコ学会βシンポジウム 〜THE FINAL〜」で座長
『ニコニコ学会β〜THE FINAL〜』で座長を務めます。ニコニコ学会βも最終回、その場に座長として呼んでいただいたのはこの上なく嬉しく思います。
ご登壇は、「機動戦士ガンダム」等の監督で知られる富野由悠季監督、SF作家として高名な瀬名秀明先生にお願いします。よくお二人とも登壇を快諾して下さって……本当にありがとうございます!
「科学コミュニケーション」のお題で、と事務局側からご相談頂いたのですが(そして、同時に内田さんの趣味に走ってくださいと)、これはもう科学または技術を題材にして創作活動をされている方にお願いしたいと思い、セッションタイトルも「科学へのアンビバレントな想い」としました。お二人とも、科学のキラキラした面だけではなく、科学にまつわるあれやこれやを語っていただきたいと思っています。
ニコニコ生放送のURLはこちら。今のうちにタイムシフト予約をどうぞ。
この「第9回ニコニコ学会βシンポジウム 〜THE FINAL〜」のプレスリリースはこちらになります。
http://niconicogakkai.jp/files/niconicogakkai9_20151126.pdf
科学技術社会論学会(STS学会)で発表
科学技術社会論学会(STS学会)第14回年次研究大会・総会(2015年度)で、「コミュニティをつくる科学コミュニケーション」というお題でセッションを立て、発表してきました。
お願いした発表者は、江渡浩一郎氏、岡本真氏。ディスカッサントに八代嘉美氏。豪華メンバーです。有り難すぎます。
内田の発表は、こちら。念のために申し上げておきますが、線形(伝達)的コミュニケーションモデルを否定するものではありません。科学コミュニケーション(サイエンスコミュニケーション)の一方向vs双方向モデルに対し、別の見方を提供しただけです。
”科学コミュニケーション”を、”コミュニケーション”から再考することを目的とした話になります。
私の発表だけだとぼんやりしているので、既に成功しているおふたりから発表を頂戴しました。
江渡浩一郎氏から「コミュニティ形成の観点から見た『ニコニコ学会β』」としてご発表。
そして、図書館を通じた科学および学術コミュニケーションに成功している岡本氏からはこちら。
「図書館での科学(学術)コミュニケーション-日本国内の事例から」
(あえて、括弧付きで学術を入れてお願いしたのは、図書館の事例が「科学」に止まらないからと思ったためです)
私自身の発表はツッコミどころだらけですが、おふたりの実践は揺るぎないものです。八代さん、岡本さん、江渡さん。ありがとうございました。