内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

チェコ国立博物館

 プラハのヴァーツラフ広場といえば、プラハの春ビロード革命の舞台となった場所。そのヴァーツラフ広場の端に、国立博物館があります。

 この国立博物館チェコ最大の総合博物館で、本館は19世紀末に建造されたルネサンス様式の建築物で国の文化財にも指定……なのですが、2018年まで全面改装工事中。

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 残念。でも、プラハの街を歩いていると、工事中のところだらけです。建造物も、石畳も。この各種様式の建造物が大事に残されていることが、プラハという街の価値であることが理解されているのだと思われます。

 お向かいにある新館は見ることができます。

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 新館では"Noah's Ark" (ノアの箱舟)という企画展示をしていたので、それを見てきました。

www.nm.cz 歴史のある国の博物館で見られる「これでもか、と物量で圧倒させる」という展示*1かなと思いきや、教育的かつ学術的、しかも配置等も工夫が感じられる勉強になる展示でした。ただ、これは長期間とはいえ企画展ですし、本館を見ていないので、これだけでチェコ国立博物館を語ることはできないのですが。

 「ノアの箱舟」というテーマに沿って、生物多様性、種の保存について展示しているのですが、小難しくならずにわかりやすい。何よりも、大量の剥製が並んでいるのが圧巻です。

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Noah’s Ark - Národní muzeum


 写真を撮っても良かったらしいと後で気付き……ウェブサイトの写真をお借りします。

 どこからこんなに大量の剥製を集めてきたんだろう。学術目的か、それともかつての富裕層が収集してきたものか*2? それぞれの種の動物が、とっておきの決めポーズでこちらをを見据えている様はひたすら格好いいし、恐ろしいほどの迫力。とまあ、剥製だけを眺めているだけでも楽しいのですが、それぞれの剥製に、その生物の説明と共に、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストのカテゴリも表示されていている。そのレッドリストのカテゴリの違いも、最初に丁寧な説明があるのですが、忘れそうになる頃に随時簡単な説明が置いてあるという心遣い。

 イケ動物の剥製をただ並べているだけでなく、地域ごとに別れており、外来種の説明も入る。そして、チェコ近郊で行われている種の保存活動の解説もある。

 パネルの説明もわかりやすくて良いんですよね。

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 これなんて、地球の歴史とともに、どの時代にその種が繁栄したか(そしていつ絶滅したか)が一覧でよくわかる。このポスター欲しい(と思ったけど、売ってなかった)。

 このように、大人も子供も楽しめる質の高い展示が期間限定とは勿体ないです。もし機会があったら、修復後の本館も、他の企画展も見てみたいです。

*1:例えば、インドのニューデリーにある国立博物館とか。貴重そうなものがたくさん並べられているのだけど、その貴重そうなものが無造作にごろっと置かれていたりする。

*2:英語の情報だけではわかりませんでした。

ヴルトボヴスカー庭園 (Vrtba Garden; Vrtbovská zahrada)

 プラハに宿泊した二つ目のホテルが、Aria Hotel。こちらは、数あるプラハの庭園の中でも最も美しいと言われている(らしい)ヴルトボフスカー庭園(Vrtba Garden; Vrtbovská zahrada)に直結しているのも特徴。宿泊客は無料で入ることができます(夏期のみ)。

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 ホテルから外に通じるドアを開けたら、こんな風景が広がっているんですから。ホテル宿泊客だけではなく、外部からも入園料を支払えば入ることができます。

 庭にある階段を上っていくと……

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 プラハのマラー・ストラナ地区の景色を一望することができます。

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 これは聖ミクラーシュ教会ですね(何度も外からは見たのですが、結局中に入る時間はなく……残念)。

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 このアリア・ホテル、ウェブサイトを見ると結婚式プランも充実していて、私たちがいたときにも2組の新郎新婦が写真&ビデオ撮影をしていました。

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 ここで結婚式をするみたい。

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 ここのレストランでの披露宴もできるようですし、予定のある方いらっしゃったらお勧めしたい!

www.ariahotel.net

 花も美しい。これだけの庭園、維持するのは手間がかかるでしょうね。

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 天気が良く、いい時期に訪れることができてラッキーでした。

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国立マリオネット劇場

 プラハでのオペラ3日連続鑑賞の最終日は、マリオネットでの「ドン・ジョバンニ」。

National Marionette Theatre – About Us

 チェコといえばマリオネット。マリオネットでオペラを演じるのはどんなものか、と興味津々で国立マリオネット劇場へ。

 この劇場は、オーストリア=ハンガリー帝国の支配下で、チェコ語の使用を禁止されていた時代に、唯一チェコ語を使って上演することが許されていたのがマリオネット劇だったとか。

 こぢんまりとした劇場ながら、歴史を感じさせます。チケットを予約していなかったので早めに行きましたが、上演時には満席。9月に入ってハイシーズンを過ぎていたから予約なしでも大丈夫だったのかもしれませんが、予約していた方が安心かもしれません。

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  実は、正直それほど期待していなかったのですが、クオリティの高さに驚きました。子供も楽しめるコメディ演出にしているのですが、大人も唸る人形遣いの技。2時間は長いのでは? と思っていましたがあっという間。

【動画】クリックすると再生されます(注:音も出ます)。

マリオネット・ドンジョバンニ2

 人形遣いの人たちの、複数人の息の合った連係プレイもすごい。どの紐をどう動かしたらこんな動きになるんだ? と色々考えながらだから観ているだけでも忙しい&頭使う。上から人が動かすマリオネット、人形遣いの手の動きも含めて鑑賞に値します。

 そして、終盤に登場する石像になった騎士長がなんとゴーレム*1ユダヤ教の言い伝えにある動く泥人形)! ゴーレムはマリオネットではなく、人が入った着ぐるみです。

【動画】クリックすると再生されます(注:音も出ます)。

マリオネット・ドンジョバンニ

 チェコならではの演出だなあと。この国立マリオネット劇場もユダヤ人地区の近くにありますし。

 「ドン・ジョバンニ」の騎士長といえば、映画にもなった「アマデウス」のピーター・シェーファーの脚本にある「モーツァルトの亡くなったお父さん説」に、これまで頭が占められていましたが、この解釈はなるほどねえと唸る。

 マリオネット劇、チェコならではの素晴らしい文化ですね。何らかの制約があると、あるものが突出して発展する典型の一つかもしれません。

 そして、思わず藤田和日郎氏の『からくりサーカス』の白銀と白金のプラハでのこの場面が頭に浮かんでしまいました。

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からくりサーカス』15巻(藤田和日郎)より

  チェコのマリオネット文化に、すっかり夢中です。

*1:チェコのユダヤ人街で特にゴーレム伝説が有名な話は、黄金のプラハ―幻想と現実の錬金術 (平凡社選書)

に詳しいです。