毎日新聞・書評寄稿『明治の技術官僚:近代日本をつくった長州五傑』
毎日新聞の「今週の本棚」欄に、書評を寄稿しています。
明治の技術官僚 - 近代日本をつくった長州五傑 (中公新書 2483)
- 作者: 柏原宏紀
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/04/18
- メディア: 新書
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幕末時、長州藩から密航してイギリスにわたった5人がいました。その5人のうち、伊藤博文や井上馨がいた、というだけでなく、工部省、工部大学校(現在の東大工学部)をつくった山尾庸三、「鉄道の父」と呼ばれる井上勝、造幣部門で尽力した遠藤謹助がいたというように、たいへんな豪華メンバーであったと。そして、科学技術立国・日本の礎を築いたという、ドラマのようなほんとのお話です。
実際、映画にもなっています。山尾庸三が主役で、演ずるのは松田龍平。
著者の柏原さんは、この長州五傑を「専門性」という補助線で描いているのが興味深いです。例えば、幕末であれば数ヶ月英国にいただけでも「専門性」を持つとして重宝される人材になる。でも、少し時間が経つだけで、求められる専門性が変遷していく。その明治維新時の動きのはやさが、今に生きる私たちにも妙に切実に感じられますし、登場する人物の葛藤も伺えます。