内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞「2017 この3冊」書評寄稿

 毎日新聞の「今週の本棚」の年末恒例、「2017 この3冊」で書評を寄稿しています。軍事研究絡みで『戦争がつくった現代の食卓』アナスタシア・マークス・デ・サルセド 著、『戦争と農業』藤原辰史著、『ペンタゴンの頭脳』アニー・ジェイコブセン著の3冊の書評です。

戦争がつくった現代の食卓-軍と加工食品の知られざる関係

戦争がつくった現代の食卓-軍と加工食品の知られざる関係

 

 

戦争と農業 (インターナショナル新書)

戦争と農業 (インターナショナル新書)

 

 

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

 

 

共同通信配信「今年の収穫」書評寄稿

 共同通信配信の「今年の収穫」で3冊の本の寄稿をしています。『ドラッグと分断社会アメリカ』C.ハート著・早川書房、『男が痴漢になる理由』斉藤章佳著・イーストプレス、『私の中のわたしたち』O.R.トゥルヒーヨ著・国書刊行会の3冊で依存症〜性暴力の流れでこの3冊を取り上げました。 

ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造

ドラッグと分断社会アメリカ 神経科学者が語る「依存」の構造

 

 

男が痴漢になる理由

男が痴漢になる理由

 

 

私の中のわたしたち――解離性同一性障害を生きのびて

私の中のわたしたち――解離性同一性障害を生きのびて

 

 

毎日新聞『共依存の倫理』書評寄稿

今週の本棚:内田麻理香・評 『共依存の倫理-必要とされることを渇望する人びと』=小西真理子・著 - 毎日新聞

  本日の毎日新聞に書評を寄稿しています。著者は分離を促す現状の回復論には個人主義などの倫理観が背景にあるといい、分離だけではない回復の道を提案します。

共依存の倫理―必要とされることを渇望する人びと―

共依存の倫理―必要とされることを渇望する人びと―

 

 

2017年「民間放送連盟賞」テレビ教養部門・審査員

www.j-ba.or.jp

 2017年度の民間放送連盟賞のテレビ教養部門の審査員をつとめました。最優秀賞は広島テレビ放送の「NNNドキュメント’16 知られざる被爆米兵~ヒロシマの墓標は語る」、日本でも米国でもほとんど知られていない被曝米兵に焦点をあてた作品。優秀賞は秋田朝日放送「シリーズ輝石の詩file11 KAMAITACHI~ハサの記憶~」、BS-TBS「ヨーロッパ財宝ミステリー 消えた黄金列車の謎×西島秀俊」、新潟放送「BSNスペシャル 俺は工場の鉄学者」、チューリップテレビ「異見~米国から見た富山大空襲~」、関西テレビ放送「ザ・ドキュメント 夢への扉「課題研究」 ~先生を越えて進め~」、熊本放送「命の記録~写真家・桑原史成の水俣~」。秀作揃いの2017年度でした。おめでとうございます。

 今年は、審査委員長だったので、雑誌『民放』(2017年11月号)で講評「多様な価値観を提示する教養番組」を寄稿しています。機会がありましたらぜひ。

今週の本棚『男が痴漢になる理由』書評寄稿

今週の本棚・新刊:『男が痴漢になる理由』=斉藤章佳・著 - 毎日新聞

  毎日新聞の「今週の本棚」に、書評(短評)を寄稿しています。

男が痴漢になる理由

男が痴漢になる理由

 

 痴漢を依存症として治療対象としてきた臨床家の手による書。加害者は性欲ゆえではなく「認知の歪み」により痴漢する。痴漢が嗜癖である、という分析は『アディクションと加害者臨床』にも繋がりますね。

アディクションと加害者臨床―封印された感情と閉ざされた関係

アディクションと加害者臨床―封印された感情と閉ざされた関係

 

  セクハラ、パワハラの加害者は、自己評価が低く、自分を肯定して欲しいがために弱者に対してハラスメントする。そして自覚なく繰り返す。痴漢だけでなくハラスメント加害者が「認知が歪んでいて自己評価が低く、自分を肯定して欲しいがために弱者に対してハラスメントする嗜癖」という研究結果に納得する方は多いかと思います。

 さらに、加害者が「相手もそれを望んでいるから」「正義のため」などと自己正当化しているという研究結果も。

『科学を伝え、社会とつなぐ:サイエンスコミュニケーションのはじめかた』国立科学博物館編(丸善出版)

 ご恵贈御礼。日本国内の、最新のサイエンスコミュニケーションの入門書に相当するでしょうか。

  国立科学博物館(以下、科博)は2006年からサイエンスコミュニケーターの育成に取り組んでいますが、その10年以上の成果を集積した一冊です。科博で開講している講座は「サイエンスコミュニケーション1」「サイエンスコミュニケーション2」がありますが、その双方を修了した「国立科学博物館認定サイエンスコミュニケーター」は今や119名にのぼるとか。

 その講座を通して得られたノウハウが、この1冊にまとめられています。第1部が多様なサイエンスコミュニケーションの概論。第2部が科博の講座で教えられる

・科学を『深める』
・科学を『伝える』
・科学と社会を『つなぐ』

の具体例を中心に、解説されています。

 著者は研究機関、メディア、企業……などなど、さまざまな分野で活躍されているサイエンスコミュニケーターの方々。各々の得意分野でその持ち味を披露するスタイルの本なので、具体的な話題が特に興味深い*1

 サイエンスコミュニケーションの射程範囲は広く、その全てを網羅するのは至難の業です。ただ、本書は「科学知識や情報の伝達、共有」の機能のサイエンスコミュニケーションに特化してコンパクトで読みやすくまとまっており、「そもそもサイエンスコミュニケーションって何?」「なんとなく興味があるんだけど」「とりあえず何か関わってみたい」と考える方々に対する、格好の入門書になるかと思います。より少し知りたい読者には、巻末の参考図書が助けになるでしょう。

*1:贅沢を言えば、それだけに執筆者紹介を巻末にまとめるのではなく、担当した部分の前に執筆者のプロフィールを書いて欲しかったな、と。