ご恵贈御礼。日本国内の、最新のサイエンスコミュニケーションの入門書に相当するでしょうか。
国立科学博物館(以下、科博)は2006年からサイエンスコミュニケーターの育成に取り組んでいますが、その10年以上の成果を集積した一冊です。科博で開講している講座は「サイエンスコミュニケーション1」「サイエンスコミュニケーション2」がありますが、その双方を修了した「国立科学博物館認定サイエンスコミュニケーター」は今や119名にのぼるとか。
その講座を通して得られたノウハウが、この1冊にまとめられています。第1部が多様なサイエンスコミュニケーションの概論。第2部が科博の講座で教えられる
・科学を『深める』
・科学を『伝える』
・科学と社会を『つなぐ』
の具体例を中心に、解説されています。
著者は研究機関、メディア、企業……などなど、さまざまな分野で活躍されているサイエンスコミュニケーターの方々。各々の得意分野でその持ち味を披露するスタイルの本なので、具体的な話題が特に興味深い*1。
サイエンスコミュニケーションの射程範囲は広く、その全てを網羅するのは至難の業です。ただ、本書は「科学知識や情報の伝達、共有」の機能のサイエンスコミュニケーションに特化してコンパクトで読みやすくまとまっており、「そもそもサイエンスコミュニケーションって何?」「なんとなく興味があるんだけど」「とりあえず何か関わってみたい」と考える方々に対する、格好の入門書になるかと思います。より少し知りたい読者には、巻末の参考図書が助けになるでしょう。