内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

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毎日新聞書評『伴侶種宣言』ダナ・ハラウェイ著・掲載

伴侶種宣言: 犬と人の「重要な他者性」

伴侶種宣言: 犬と人の「重要な他者性」

 『サイボーグ宣言』で知られる、ハラウェイの次の「宣言」になります。『サイボーグ宣言』は、生物学と哲学とフェミニズムを駆使した難解で重厚で威圧感さえ与える文です。ちなみに猿と女とサイボーグ―自然の再発明に収録されていますが、私も読んでいてくらくらしました。松岡正剛先生をして「ちょっと難しい」と言わせるくらい。

 そのハラウェイということで身構えて読むと「あれっ?」と思うかもしれません。犬好きの彼女が書いた、犬ラブ本(犬デレ本)のようで、文体も語りかけるように優しいのです。しかし、読み易いながらしっかりアカデミック。

今週の本棚:内田麻理香・評 『伴侶種宣言−犬と人の「重要な他者性」』=ダナ・ハラウェイ著
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「重要な他者」に対しては、思い入れのせいか「他者性」を忘れてしまう。「父権的」に相手を支配することもない。「母性」でもって相手を呑(の)み込むのでもない。他者性という視点があれば、適切な愛の形を結ぶことができるかもしれない。将来来たるべきかもしれない麗しい愛の姿を垣間見た。

 ハラウェイは猿やサイボーグや犬を使って、<重要な他者性>との理想的な愛のかたちを探っていくのです。
ちなみに、5年後に続編としてこの本が出ています。

犬と人が出会うとき 異種協働のポリティクス

犬と人が出会うとき 異種協働のポリティクス

 入手したのですが、まともに読んでいません。ただ、「サイボーグ宣言」より文体も軽やか。日本ではこちらの方が先に翻訳されて出ています。