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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞『アノスミア』書評掲載

 毎日新聞の「今週の本棚」で『アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語』(勁草書房)の書評を書いたのが掲載されています。

アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語

アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語

今週の本棚:内田麻理香・評 『アノスミア』=モリー・バーンバウム著

 いやー、これはお世辞も何もなく、純粋に面白かった。シェフ志望だった女性が事故で嗅覚を失ってしまう(そういう病気があること、お恥ずかしながら知らなかった)。運良く、彼女の嗅覚は再生するのですが、彼女は自分の病気が何であるかを探るために、専門家を尋ね回って取材する。その著者のバイタリティーにも感心する。
 科学書であり、本人のドキュメンタリーであり。そして書評にも「このように香り立つ、美味しい科学書はめったにお目にかかれない」と書きましたが、シェフ志望だっただけに、香りの表現が豊かなので、視覚から美味しいにおいが立ち上ってきて、味覚まで感じてしまえるような不思議な感覚に酔えるんですよねえ。良い体験をさせていただきました。あらゆる感覚を体験できる本ってあるんだ……とびっくりしました。

 以前、心理学の先生とお話ししたことがあるのですが、その先生は化粧品会社経由の方。で、香水を作る人は、調香師学校に通って、においに名前を結びつけて覚える訓練をする、と。嗅覚は五感の中でも原始的な感覚と言われますが、「名前」と結びつけないと覚えられない、使いこなせるようにならないというところが興味深いですね。本書にも、その話が出てきます。