内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

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毎日新聞『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』寄稿

 毎日新聞に書評を寄稿しています。

今週の本棚:内田麻理香・評 『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』 川添愛・著、花松あゆみ・絵 - 毎日新聞

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット  人工知能から考える「人と言葉」

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」

 

  イタチが主人公の可愛いおとぎ話、きれいな装丁とイラスト、ユーモラスな筆致。なまけものでありながら(だからこそ)魅力的なイタチたちの言動に引きこまれて、すらすら読めますが、「人工知能にはなぜ私たちが使う自然言語処理が難しいか」が説明されているというお得な本。おすすめです。中学高校生にもぜひ!

 本書は寓話仕立てで、機械による自然言語処理を説明するサイエンスライティング本の範疇に入るのでしょうが、このような形式の場合、肝心の物語が面白くないと興ざめですし、実際そのような解説書、啓蒙書は少なくない(ただマンガにしただけとか。いや、これ自分にもブーメランが飛んでくることは承知の上で……)。こちら本の場合は、サイエンスの啓蒙書という要素を取り払っても、ひとつの作品として完成度が高い。

 言語学者である著者の川添愛さんは、過去に

精霊の箱 上: チューリングマシンをめぐる冒険

精霊の箱 上: チューリングマシンをめぐる冒険

 

 

 などを著しています。こちらは、ファンタジー小説という体裁で言語学を扱っています。作家としての川添さんの今後の作品も楽しみです。