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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

批判する書評の条件とは?

つれづれ

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 先日、毎日新聞の書評員の「書評パーティ」に行ってきた。あの方も、この方も! でテンション上がる。ただ、前回行ったときは、書評員になったばかりで場違いで小さくなっていたのですが、3年目ともなると、自分の書いた書評を読んで下さり、名前を覚えて下さる方々もいて居心地が良かった。ちなみに、毎日の書評員は(朝日や読売と違って)年限がなく、定期的な会合もなく、自由に好きな本を選んで下さい、という(だからこその、年に一度の書評パーティ)。この「好きな本を選んで下さい」は、嬉しくもあり、プレッシャーでもある。

 毎日新聞の書評欄は、故・丸谷才一先生が全面的に改革したのだが、基本的に「褒める書評を書こう」という方針だったらしい。ただ、池澤夏樹先生曰く丸谷先生は批判してもよい対象の本とは

・著者が大家

・ベストセラー

 であるらしい。もう一つの条件は池澤先生もお忘れになったようで。
確かに、新聞書評は、その本の売れ行きを左右する。その点では、批判も大ありの学会誌の書評と異なる(まったく立ち位置が異なるが)。その意味で丸谷先生の仰ったことも納得がいく。

 でも、書評をしている身であると……ベストセラーを書評したくない(既に売れている本ではなく、発掘したいという願望がある)、自分がつまらないと思う本に手をかけたくない。周囲の人たちと「そんな本対象にしたくないよね」と、ぼそぼそと。

 やはり、(毎日新聞の場合、書評したい本を自由に選べる。先着順だが)気に入った本を書評したい! と皆さん思うのではないか。少なくとも私はそうだ。

Twitterやめました

つれづれ

 おととい、某若手優秀研究者さんと「昔のTwitterは牧歌的でしたよね」という話になった。うん、あの頃は友人か知り合い同士で、バカなやりとりも含めて楽しかった。

 私が玉ねぎを切ったときに「指も切った」とつぶやくと、「大丈夫?」と言ってくれるような。そしてお互いどうでもいい話をするような。2007年の頃だ。

 でも、今やTwitterはそんな場ではない。サイバーカスケード*1が起き、中庸な意見が淘汰され、極端な意見だけが集中するようなゆがんだ世界になった。

熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

熟議が壊れるとき: 民主政と憲法解釈の統治理論

 

このサンスティーンを引用したのが、

ネット炎上の研究

ネット炎上の研究

 

  

 こちらは最新の判例が多く、こんなSNSでの行為も犯罪になり得るという意味で、SNSを使っている私たちは被害者だけでなく、加害者にもなりうることがよくわかる。リツイートも侮辱罪などの証拠として認められるらしい。

 さて。梅田望夫氏がかつてWeb2.0を称揚し、あっという間に残念なWebと手のひら返しをしたわけであるが。私は氏の見識に今さらながら納得がいく。
 サイバーカスケードで極端な意見ばかりが対立するようになった今、私のような泡沫な者に対しても、ないことないこと言う者たちが現れた。彼らに関わる必要はない。そこでTwitterアカウント@kasokenを閉めた。

 でも、2007年から鍵付きで、裏アカウントで牧歌的にやっているアカウントは存続しさせている。まだSNSの可能性を信じたい気持ちがあるのだろう。

 

*1:サンスティーン『熟議が壊れるとき』で知った人だが、さすがの造語

毎日新聞「今週の本棚」書評掲載『絵巻とマンダラで解く生命誌』

しごと 書評

 本日の毎日新聞に書評が掲載されています。久々の大書評。対象本はこちらです。

今週の本棚:内田麻理香・評 『絵巻とマンダラで解く生命誌』=中村桂子・著 - 毎日新聞

絵巻とマンダラで解く生命誌

絵巻とマンダラで解く生命誌

 

  著者の書くことに「そうそう」と頷くところが多すぎて、逆に書評として距離をとって書くのが難しかった。
  中村桂子先生の生命誌をご存じの方は多いでしょうが、絵巻とマンダラで美しく包んで説明した決定版(今のところの)だと言えるでしょう。図版(生命誌絵巻)も紙上に載っているはず。図版も載せて下さったのはありがたい。でも、ぜひ、ぜひ本を手にとっていただきたい。

 本書の終盤にでようやく気づいて、書評にも載せたのですが、著者は現代の「蟲愛づる姫君」なんだなあとしみじみ。著者は科学コミュニケーションという言葉が出る前から、その営みを実践されていた第一人者でもあります。

 

『ニコニコ学会βのつくりかた』刊行

しごと 掲載 書籍

 私が12月に「ニコニコ学会β〜FINAL〜」セッションの座長をしたのですが、そのときの富野由悠季監督と瀬名秀明先生の対談が、『ニコニコ学会βのつくりかた』に収録されています。私は単なる座長(司会)ではありますが、登場しています*1。この奇跡の対談をキャスティングしたことに誇りを持っています。本に取り上げて下さったのもありがたい。

ニコニコ学会βのつくりかた―共創するイベントから未来のコミュニティへ

ニコニコ学会βのつくりかた―共創するイベントから未来のコミュニティへ

 

  『つくりかた』の名に恥じない、上手な作りの本になっていると思います。はっきりしたコンセプトがあり、それでイベントを作る細かいノウハウが惜しげもなく書かれています。全員で集合写真、とか撤退を早くする、とか確かに大事なんだけど軽視されやすい、というか気づかない。ワークショップなど実施される方には、大きなヒントが膨大に得られるかと。あと、徹底したリハーサルの部分に関しては、イベントをする方には必読かと思われます。私も横で見ていて驚きました。香盤表に関しては、テレビ出演の経験があった私でも見たことがありませんでした。勉強になりました。

そもそもコンセプト作りに動機がなければならない。それをほかの人を巻き込む形にするにはどうしたら良いのか、まで丁寧に書かれている。

 個人的には、くとのさんの書かれた部分(p.71)

「第9回の『科学へのアンビバレントな想い』セッションは、ガンダムシリーズで知られる富野由悠季監督と作家の瀬名秀明さんに登壇して頂きましたが、想像されるかもしれないように先に著名な方の登壇を決めて後で内容を付けたのではありません。科学コミュニケーションという大きなテーマがまず先にあり、科学の要素を取り込んだ作品を作り上げるというニコニコ学会βならではの切り口が設定された上で、座長のサイエンスライター内田麻理香さんからお二人に登壇を依頼しました」


という記述が嬉しい。ありがとうございます。また、有名人が登壇しても、座長がデリゲートして、ニコニコ学会βのコンセプトに合わせていただくというという説明も。このあたりを書いて頂いて、座長としては感涙です(いえ、ほんとに大変だったんですよここも含めて……皆様のご協力あってこそでしたが)。

 ここまで、内幕を披露して良いの? というくらい有り難い一冊です。

 

*1:しかし、この細身過ぎる二人との写真は我ながらきついものが

『科学者の目、科学の芽』刊行

しごと 書籍

 

科学者の目、科学の芽 (岩波科学ライブラリー)

科学者の目、科学の芽 (岩波科学ライブラリー)

 

  岩波書店で編集された『科学者の目、科学の芽』に、私の拙文も掲載されています。36編のそうそうたるメンバーの端っこに載せていただいて幸いです。私のタイトルは「マリー・キュリー再訪から」です。

 掲載者およびタイトルは以下の通りです。

第Ⅰ部 見えるものと見えないもの
・土地の色・影の色 三浦佳世 人魂の行方 加藤 真 垣間みる潜在的な心――日常の隙間から 下條信輔
・路上のカニ 佐藤正典
・誰が光をみたか 木村龍治
・歌の科学,科学の歌 円城 塔
チベットの聖地を巡りながら 小林尚礼
・愛の矢 千葉 聡 見えないモノを視る――ブラックホールの色彩と異星の夕焼け 福江 純
・立場によって違って見える世界 佐藤克文
・かみひとえ 時枝 正

第Ⅱ部 出会いと発見
・菜の葉にとまれ 中村桂子
・酒と氷とリケジョとリケジィ 長沼 毅
・汽車の汽笛は本当にポッポーか?――オノマトペと「世界を知覚する網」 下條信輔
・黒いものは黒い 川上和人
ブラックホールに落ちるとどうなるか? 大栗博司
・カウントダウン 三浦佳世
屋久杉の年輪,岩石の磁気と宇宙現象 江沢 洋
マヤ文明――出会いと日常生活 青山和夫
・二番煎じの研究 木村龍治
・太陽からの贈りもの 川上紳一
・変容する形態――比較形態学のすすめ 倉谷 滋
・「路上観察学」的アンテナを張りめぐらす 三中信宏
・あの日,カラスは応えたのか 松原 始

第Ⅲ部 科学と社会 驚きから普遍へ
・科学史から見た科学の魔力 三村太郎
・海と魚と環境教育 益田玲爾
・イノハナ茸 小澤祥司
・夏のはじめに 大河内直彦
・芸術の一ジャンルとしての科学 岩崎秀雄
・生存のジレンマ 木村龍治
・自然と人間性 八代嘉美
マリー・キュリー再訪から 内田麻理香
・日常からの超常授業 植木不等式
・科学は危機なのか? 高井 研
・タクシーが教室,運転手は先生――市民科学から庶民科学へ 安渓遊地
寺田寅彦を「活用」する 鎌田浩毅

 この豪華メンバーの本に掲載させていただいたことを嬉しく思います。科学を多面的に見つめるのに適切で素晴らしいエッセイが揃っているかと思います。どうぞよろしくお願いします。

毎日新聞書評「今週の本棚」寄稿『中谷宇吉郎 雪を作る話』『寺田寅彦 科学者とあたま』

書評 しごと

 本日発売の毎日新聞に、書評を寄稿しています。

内田麻理香・評 『中谷宇吉郎 雪を作る話』『寺田寅彦 科学者とあたま』

 書評対象本はこちらです。

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

中谷宇吉郎 雪を作る話 (STANDARD BOOKS)

 

 

寺田寅彦 科学者とあたま (STANDARD BOOKS)

寺田寅彦 科学者とあたま (STANDARD BOOKS)

 


 最初は、中谷宇吉郎の本だけを書評しようと思っていたのですが、彼のことを書いていると師であり友人であった寺田寅彦に触れないわけにはいかない。そうなると、中谷の随筆を書評しているのか、寺田の随筆を書評しているのかわからなくなってしまい、担当記者さんに「中谷だけにするか、寺田も入れるかご判断お願いします」とお任せしたところ、二冊の本の書評にして下さった。ここでタイトルに中谷の本を入れて下さったところが担当記者さん、さすが! と。

 私は、中学生の頃から柿の種 (岩波文庫)を愛読していて(私がいま、こんな仕事をしているのは寺田寅彦の影響も大きい。人生を方向付けた人でもある)、寺田寅彦ファンなのです。今回は中谷宇吉郎の評に徹しようと思ったのですが「あれ、寺田も同じようなこと言っていたような……」と改めて読み返してみると、この二人の関係を切って書評してしまうのはもったいない、と。

 でも、中谷宇吉郎は単なる寺田のお弟子さんではなく、彼なりのオリジナリティがある。おそらく文学的表現に優れているのは師の寺田だろう。しかし、中谷の科学者としての営みや、科学的な描写は丁寧で、かつわかりやすい。これらの点においては師を超えていると言える。しかし、問題意識は共通していて(特に、科学教育)、互いに共鳴しあっているところから、師弟関係、いや友人関係の深さを見出すことができる。

 科学に対する興味は自然に対する敬意によって養われる。これは、子供の頃に接した奇想天外なものや、化物などに対して抱かれたりするというのが両者の共通した考えだ。当時の科学教育は、知識の伝達を大事にするあまり、その手の非科学的なものを子供から排除しすぎではないだろうかと懸念する。これは今の科学教育にも通じる示唆であろう。

 このあたりは、科学コミュニケーションや科学教育に携わる者は傾聴に値する両者の指摘だろう。化物だのいわゆる「科学的でない」ものを体感してこそ自然への興味が湧き、科学への興味が養われるというのが両者の主張だ。

 それにしても、平凡社が「STANDARD BOOKS」がこのようなレーベルを新たに刊行したことが個人的に嬉しい。

科学と文学、双方を横断する科学者・作家の珠玉の作品を集め、一作家を一冊で紹介します。

 と述べ、「知のスタンダード」となる文章を提案するという。今後の刊行も楽しみ。

 

拙著『面白すぎる天才科学者たち 世界を変えた偉人たちの生き様』刊行

しごと 書籍

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  2007年に刊行された

恋する天才科学者

恋する天才科学者

 

  が、講談社+α文庫として発売されました。文庫版、とはいえ、文章全体を大きく書き直し、断頭台の露と消えた天才化学者ラヴォアジエも新たに収録し、新装開店です。

 

  Amazonでの説明はこちら。

女嫌いで喧嘩好きだったニュートン、女癖が悪かったアインシュタイン、現代数学をつくった不遇の天才ガロアは恋愛沙汰で決闘死、蘇る愛とロマンに生きた シュレーディンガー……歴史に残る偉大な科学者たちの人生は、強烈すぎて面白すぎる! 偉大すぎてダメすぎる巨人たちの激烈な人生を、その人間くさい素顔 とともに、人気サイエンスライターがコミカルに紹介。こんな偉人伝、読んだことがない!


 帯の絵を描いて下さったのは

決してマネしないでください。(1) (モーニングコミックス)

などで活躍中の漫画家、蛇蔵さん。ありがとうございます。

 単行本のときの川名潤さんの装丁も素敵でしたが(今さらながら、贅沢させていただいたな……としみじみ)、どちらもお気に入りです。

 そして、単行本のときにもお世話になったイラストレーター、西谷直子さんが、いくつも本文中のイラストを描き直して下さいました。こちらも感謝です。

 初めての単行本化は嬉しいです。文章に関しては、かつてのダメダメなものをかなり読みやすくしたつもりです。どうか、ご愛顧よろしくお願いします。