内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

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「石の世界と宮沢賢治」国立科学博物館


 先日、上京の折に企画展「石の世界と宮沢賢治」 - 国立科学博物館を見てきました。この科学博物館での現在の特別展「医は仁術」(これは未見だが見たい)に比べ、ひっそりと開催されているような企画展でしたが、これが! 予想以上に興味深く、勉強になりました。特に後半が。

 宮沢賢治が作家だったことは知っていた。学校の先生だったことも、自然を愛する人だったことは知っていた。しかしここまで鉱物・地質学の研究者であり、その知見を彼の文学作品に散りばめさせていたことは知らなかった。……しかし、自分が地学弱いの、このようなときに後悔しますね。

 この企画展では、後半にさまざまな鉱物そのものを展示し、そこに宮沢賢治が書いた文章(詩も含め)を添えている。そして、賢治の文学作品を取り上げ、そこに登場する鉱石や地学の専門用語を紹介している。……帰りの新幹線の時間が迫っていたので、この盛り上がる後半が駆け足になってしまったのは無念。

 この企画展を見ていて、南方熊楠寺田寅彦を連想しました。宮沢賢治はアカデミズムの中枢にいたことはなく、自然の中で地道に研究を続けた人。そして南方熊楠はアカデミズムから爪弾きにされ、在野で研究を続けてきた人。
 あ、ファンも多いから御存知の方も多いと思うのですが、南方熊楠は在野の研究者として今では名を残していて、Nature誌の彼の論文投稿数は51本(52本という説も)で、日本人最高記録。昭和天皇南方熊楠に目を止め*1行幸した天皇に進講した。

 そして、宮沢賢治と同じく科学者であり、文学者でもあった寺田寅彦。ただ、寺田寅彦は東京帝大の教授であり、アカデミズムのど真ん中にいるところが違う。そして、寺田寅彦の随筆集はサイエンスをそのまま伝えるような啓蒙的なものが多い(俳句は違うが)。宮沢賢治の文学作品に登場するサイエンスは、すっかり作品の中に融合していて、独特の世界観を作りだしている。文字を通したサイエンスの伝え方もいろいろだな、としみじみ。こう比較して取り上げてしまいましたが、私は寺田寅彦の大ファンであり、憧れの人であることも明記しておきますね。

 筑摩書房から出ている新校本 宮澤賢治全集、欲しくなります……。

*1:昭和天皇もサイエンティストですねえ……。