内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

「六条御息所 源氏がたり」

六条御息所 源氏がたり 一、光の章

六条御息所 源氏がたり 一、光の章

 林真理子の手による,「源氏物語」の換骨奪胎作品.瀬戸内寂聴女人源氏物語〈第1巻〉 (集英社文庫)とスタイルは同じで,どちらも「女君」の視点から物語をすすめていく.瀬戸内寂聴の作品はさすが!であって,これはもちろんお勧めなんだけど,この林真理子のはそれを超えたのではないかと感じる.女の業を書かせたら筆が冴えまくる,という意味ではこのお二人は共通しているんのですが.

 まず,登場人物の中で一番「哀しい」女であった,六条御息所ひとりに統一している設定が大成功だったのではないだろうか.またその舞台作りが自然なのよね(ここはネタバレになっちゃうから書かない).

 あとは,林真理子の作品ではおなじみの「いやらしい女の階級意識」が,元東宮妃という高貴な立場の彼女から語られるととてつもない説得力を持つ.「源氏物語」で,現代人がいまいちぴんと来ないのは,この身分に対する意識なのよね.なんだかんだいっても,当時に比べてしまえば総中流社会だもの.

 あと,瀬戸内作品と,林作品を読み比べると,どの女君に対して思い入れがあるかの違いがわかって,そこもまた楽し.

 次も続くそう.次作は3月末か.
六条御息所 源氏がたり 二、華の章

 私は,早く「若菜(上)(下)」「柏木」の章が読みたい.私が「源氏物語」で一番好きなのはこの3章だ.物語が物語として作者の手を離れて疾走しているように見えるこの部分*1.というわけで,次巻以降も期待!

*1:よく,映画化されるけど,全体じゃなくてこの3章とか,宇治十帖とかそこだけにしたほうがディープで面白いドラマになると思うんだけど,ね.