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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞「今週の本棚」マガジン評『MONKEY Vol.9』寄稿

 本日の毎日新聞の「今週の本棚」にマガジン評(雑誌評)を寄稿しています。対象の雑誌はこちら。(麻)の一文字署名が入っています。

MONKEY Vol.9 短篇小説のつくり方

MONKEY Vol.9 短篇小説のつくり方

 

 『MONKEY』は、翻訳家(元東京大学教授)の柴田元幸氏が編集責任をしている雑誌です。前々から面白そうとは思っていたのですが、今回、ようやくじっくり読むことができました。

 特集は「短編小説のつくり方」とありますが、短編小説のつくり方指南ではありません。柴田さんが「『不思議な短編小説のつくり方をする人が、この世にはいるもんだなあ』という思いを形にした」と前書きに書いてあるとおり。グレイス・ペイリーというユダヤ系ロシア出身・米国在住の作家を、村上春樹氏の訳で紹介し、柴田氏による村上春樹のインタビュー(相変わらずこの二人は息が合っている!)、そしてその他の執筆陣を通して「短編小説の奥深さ」をこれでもか、と魅せてくれています。

 初めてグレイス・ペイリーの短編を読んだのですが、次の一文が予想もつかない方向に飛ぶ、主語が誰かわからなくなる……(『この「祖母」ってだれのこと?』)というわけで、行きつ戻りつ読んでいたのですが。リズムがつかめるようになるとハマる。
 特別な出来事を書いているわけでもない、特別な人を登場人物に出しているわけでもない。でも、結果的に独特な短編小説になっている。まさに不思議なつくり方をする作家です。
 ペイリーが出自、家族や友人との強固な繋がりから、これらの小説が生まれているというのもまた良い。ついつい、ペイリーの短編集も買ってしまいました。

人生のちょっとした煩い (文春文庫)

人生のちょっとした煩い (文春文庫)

 

  ペイリーは寡作で、出版した書籍は3冊。そのうち2つが村上春樹訳で日本で出版されており、もう一つが

最後の瞬間のすごく大きな変化 (文春文庫)
 

  こちらの本になります。

 この雑誌がなかったら、ペイリーの短編小説を読むことはなかったかもしれません。ありがたい出会いに感謝。この号に載っているペイリーの短編小説、エッセイ、インタビューは全て村上訳。村上春樹氏は、本人の小説やインタビュー集もそうだけど、翻訳に関してもハイテクだなあとつくづく思い知る。別人が書いている(訳している)ように見えますからね。

 それにしてもこの『MONKEY』という雑誌、他の寄稿している方々も豪華だし(写真、イラストも)、贅沢な雑誌です。何より、編集長の柴田さんが一番楽しそうなのがよーーーくわかる。ご機嫌さがこちらにも伝わってきます。