内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

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毎日新聞「今週の本棚」書評掲載『魔女・産婆・看護婦−女性医療家の歴史』

 今回の書評は、こちらの本になります。なんと2回続けて大書評を書かせていただきました。ありがとうございます。

今週の本棚:内田麻理香・評 『魔女・産婆・看護婦−女性医療家の歴史』=バーバラ・エーレンライクほか著 - 毎日新聞

魔女・産婆・看護婦: 女性医療家の歴史

魔女・産婆・看護婦: 女性医療家の歴史

 

  1970年に発表されたパンフレットの、増補改訂版です。前半は、14〜17世紀での魔女狩りの対象者が、女性の医療従事者も含んでいたことも指摘しています。

 「魔女」医療者はなぜそこまで脅威だったのか。彼女らは信仰や教義よりも経験や検証を重んじた。当時の権力者が医療や医薬に対して、行動的で探究 心旺盛だった彼女らを恐れたのは、その実践が当時の<科学>だったからである、と著者は指摘する。

 後半では、舞台は米国に移ります。階級差が著しかった19世紀末前後、中流上層階級の女性は「病弱」とされ、社会から切り離されます。その一方で、労働者階級の女性は「病原菌」として扱われるという。「卵巣心理学」という学問? のもと、女性の人格を変えるために卵巣を切除するという手術まで行われたということです。<医学らしきもの>が女性をいかようにもコントロールできた事実があったということを伝えています。
 それは今も変わりません。

先日、高等学校で配 布される保健体育の副読本で、「女性の妊娠しやすさと年齢」のグラフに出典不明瞭な、改ざんされた可能性が高いデータがあったというニュースがあった。医療という<科学>は、権力者が私たちをコントロールする手段になり得る。これは、女性だけでなく、男性も懸念すべき事項であろう。本書は、医療制度には私たちを振り回すどれほどの力があるかを示唆している。

 今回、冒頭&ところどころ、藤田和日郎氏の漫画『黒博物館 ゴーストアンドレディ』を使わせていただいたんですが、よくこんな無茶な原稿を担当者さんが許して下さったなあ。感謝です。