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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞書評:本日の本棚『被曝評価と科学的方法』

 毎日新聞に、書評掲載です。
 放射線に対する被曝は、情報が氾濫していて、私たちには判断が難しい。括弧書きの「科学」の情報があふれている。その中で、天文科学を専門とする科学者で、原子力発電所や被曝評価を専門としないのに、科学的態度で、原発放射線の問題に真摯に対応した研究者ががいる。

今週の本棚:内田麻理香・評 『被曝評価と科学的方法』=牧野淳一郎・著

被曝評価と科学的方法 (岩波科学ライブラリー)

被曝評価と科学的方法 (岩波科学ライブラリー)

 

  私たちは、学校教育で理科を学んできたけど。その扱いは未だにわからない。諦めたくなるが、「高校でならう程度の理科で判断できる」と著者はいう。
 いえ……基本、無理なんですけどね。とはいえ、学校教育がしっかり身についていたら、私たちは無敵だ。でもね。それができないのは、私たちの怠慢かもしれないとも思う。その牧野さんに丁寧に導かれながら、読むことができるのが本書。

原発事故と科学的方法 (岩波科学ライブラリー)

原発事故と科学的方法 (岩波科学ライブラリー)

 

  この前著の、著者の態度も同じです。
 あふれかえる専門家の言語に対して、不安に思った方は、こちらの影浦峡氏の一冊をお読むと、すーっと納得いくと思う。

「現在の科学ではわかっていないこと、すなわち科学の限界を、存在しないことが明らかにされたこと、すなわち科学の勝利とすり替えてしまう議論は、不幸な ことに、一定の広まりを見せています」と指摘する。現在の科学でわからないことを「わからない」と言わず、「問題はありません」と断言する専門家の言葉は 少なくない。そのようなお墨付きは、私たちに心の安らぎを与えてくれる。

 (括弧内は、影浦氏の著作からの引用です)

信頼の条件――原発事故をめぐることば (岩波科学ライブラリー)

信頼の条件――原発事故をめぐることば (岩波科学ライブラリー)

 

  東日本大震災後、世の中は「安心派」「危険派」に分断されている。科学がもし、心の支えになるのであれば、どれが「科学的態度」かをいくつか読み比べるのが良いかと思う。

 科学には「わからない」ことが多すぎる。その「わからないこと」を「わからない」と受け入れるのが科学的な態度か。もしくは「安心です」「問題ありません」という専門家の言葉を信用するのが科学か。