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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞「今週の本棚」『壊血病』

壊血病 医学の謎に挑んだ男たち (希望の医療シリーズ)

壊血病 医学の謎に挑んだ男たち (希望の医療シリーズ)

 本日付けの毎日新聞の書評欄「今週の本棚」には、こちらの『壊血病』を選びました。毎日新聞のネット版でも読むことができます。

今週の本棚:内田麻理香・評 『壊血病−医学の謎に挑んだ男たち』=スティーブン・R・バウン著 - 毎日新聞

 200万人を死に追いやった奇病。その克服の医学史としても興味深いですが、英国海軍をはじめとする海の男たちの冒険談でもあります。
 大航海時代、輝かしく見えますが、その実態は……。船員たちの衛生状態も劣悪、食料事情も最悪(またこの本の描写が上手く、読んでいてひえーーーとなってしまう)、様々な疫病、そして謎の壊血病。

 壊血病の克服のきっかけの一つは、リンドの科学的エビデンスに基づいた治療。患者を数組に分けて、彼らに与える栄養を変えて試験したという。これは医学史上初の臨床試験と言われていますが、今だったら患者の同意をとらずにこんな実験したら倫理的に問題ありすぎですね。この船医リンドの臨床試験は、サイモン・シンらの名著、『代替医療革命』にも書かれています。

代替医療解剖 (新潮文庫)

代替医療解剖 (新潮文庫)

 個人的に驚いたのが、あのキャプテン・クックがサイエンティフィックな思考ができる才人だったという話。彼が王立協会から与えられた名誉あるメダルは、壊血病への功績に対してだったとか。

 読んでいると、壊血病で死ぬ人の方が数十倍なのに、海上で戦争したり、領土拡大とかなんて、何をしているんだあなたたちはと言いたくなりますが、それだけの魔力が海にはあったのでしょう。

危険に満ちた海に挑んだ彼らのおかげで、世界はつながり、さまざまな流通が可能になった。地球上で海は七割を占める。陸路だけではこうはいかない。しかし海の支配には壊血病という報復があった。私たちの今の生活は、この名もなき船員たちの犠牲の上で成り立っている。