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内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

毎日新聞『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』書評掲載

 最近、リケジョ*1という言葉を耳にするようになり、理系女性に注目が集まっている。私も、及ばずながら理科系学問に関わる男女差に関し、協力できることがあれば協力してきたつもりだ。でも、その「リケジョ的方針」はあくまで「おじさま目線」で、あり、その目線の取り組みが多いような気がしてならない。「理系女子、大歓迎!僕は好きだよ、応援するよ」……これは現在のところ数少ない「アクセサリー」のある女性が良い、と言っているに過ぎない。装飾品としての理系。リケジョ、理系女子のアピールは「理系女子『だって』可愛いんです!キラキラしているんです!」路線が目立つ。ただ、これが理系女子を増やすことに繋がるのだろうか?

 理系女子・女性のイメージが悪いと思われるケースは少なくない。「理系に行ったら、自分の女性性が損なわれるのでは?」と心配している女子中高生も一定数いるだろうから、彼女らには有効だろう。しかし、おじさま目線の「理系女子だって可愛いよね」は、「ただ理系学問に興味があるのに、可愛らしさまで求められるのか?」とうんざりしてしまうに違いない。あと、まずいなと感じるのが、理系女子自身の活動が、キラキラ理系女子路線に疑いもなく(ないように見える)乗っかってしまっていること。「おじさま目線を女性らが自らのものにして、それが自分の価値観となってしまっている」からだ。男性目線を気にするあまり、その男性の価値観に染まっている。厳しい言い方をすれば、おじさま目線を内なる指標とした「リケジョ」さんたちが、性差別を助長しているのだ。

 前置きが長くなった。今回、書評した本はこちら。

なぜ理系に進む女性は少ないのか?: トップ研究者による15の論争

なぜ理系に進む女性は少ないのか?: トップ研究者による15の論争

登録している毎日新聞の読者の方は、ネットでも見ることができます。

今週の本棚:内田麻理香・評 『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』=スティーブン・J・セシほか著ー毎日新聞

 副題にあるとおり、このテーマに関して15のトップ研究者が「エビデンス(根拠)に基づく」姿勢を貫きつつ、議論を展開している。それぞれの研究者は異なる見解を示し(当然だ)、読む側は錯綜するかもしれない。でも、本書にあるとおり「気安い答えなどは示されない」のだ。
 ただ、読めばわかるが、いわゆる数学・科学分野における、脳の男女差はあったとしても「たいしたことがない」ということ。しかし、認知面でのジェンダー差は存在する。例えば、心的回転と呼ばれる有名な課題。三次元の物体がいくつかの方向で示され、それが同一の形状であるか否か判断する課題だ。これに関しては、男性のほうが統計的に女性より優位であることが複数の結果からわかっている。
 あと、興味深いのが、女性は人や生物の分野の職業(医学、生物学)を続ける傾向があるが、同等の数学や科学の能力がある男性はモノ指向の分野(数学、物理学、工学など)を続ける傾向があると示す結果である。「嗜好」という男女差。
 ただ、個人的に思うのは心的回転の能力ひとつで、数学・科学の能力が決定されてしまうのか? 数学・科学ってそんなに単純な学問ではない。確かに嗜好の差はあるかもしれない。が、モノ指向の女性がステレオタイプにより、その道を諦めてしまうのはくい止める必要があるだろう。
 エビデンスベースの本書が、男女差是正の議論の出発点になるだろう。

*1:講談社登録商標。調べれば出てきます。