内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

『女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか?』村松秀、早乙女ケイ子著

 Eテレで放送されている「すイエんサー」を作ったエグゼクティブプロデューサー、村松秀氏の著。
 本当は、書評で取り上げたいくらいなのですが、私自身が「すイエんサー」に何回も出演させていただいており、今回の本も名前が出ていて数項目で多少関わっているので、利益相反を恐れてブログでの紹介になってしまいました。

 Kindle版も出ています。

すイエんサー」で披露してきた科学的思考法『グルグル思考』を

  • 疑う力
  • ずらす力
  • つなげる力
  • 寄り道する力
  • あさっての方を向く力
  • 広げる力
  • 笑う力

とまとめ、番組での躍動感とともに、科学の思考法および科学リテラシーの優れた解説本、というか教科書になっています。

 そもそも「すイエんサー」という番組にパイロット版から関わることができて、その内幕を見ることができたのも貴重な経験でした。すイエんサーガールズには「台本がない」。彼女たちは、目の前の疑問に対して必死に取り組むことになる(彼女たちの早く帰りたーいという、本音込みで)。

 私は、今まで科学番組に対してクイズ番組などで正答を提示する「科学の結果」だけを伝え、「科学の営みのプロセス」を紹介するものがないかもしれない……と思っていたので、村松プロデューサーのこの手法での番組作りには嬉しく思い、驚き、尊敬しました。
 台本のないすイエんサーガールズたちが、「グルグル思考」をしながら、身近な、でもそういえばいつも不思議だなと思っていた疑問を解決する。視聴者は、彼女たちのグルグル思考を見ながら共に体験した気分になる。優れた科学番組です。

 グルグル思考を積み重ねたすイエんサーガールズたちが、東大をはじめとする有名大学の学生との勝負に勝利できたのも、納得のいく話です(詳細は本書をご覧下さい)。このグルグル思考は、科学的思考法や科学リテラシー(その定義はあいまいですが)を身につけるのための本質を突いているのです。

 大人も、子供にもぜひおすすめしたい一冊です。「すイエんサー」のコンセプトを知ることができます。

 ちなみに、村松氏は世間を揺るがしたヘンドリック・シェーンの捏造問題を追った番組を作り、『論文捏造』と書籍化し、科学ジャーナリズム賞も受賞しています。硬軟どちらもいける、科学番組のプロデューサーです。

論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

 
論文捏造 (中公新書ラクレ)

論文捏造 (中公新書ラクレ)

 

 

拙著『面白すぎる天才科学者たち 世界を変えた偉人たちの生き様』刊行

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  2007年に刊行された

恋する天才科学者

恋する天才科学者

 

  が、講談社+α文庫として発売されました。文庫版、とはいえ、文章全体を大きく書き直し、断頭台の露と消えた天才化学者ラヴォアジエも新たに収録し、新装開店です。

 

  Amazonでの説明はこちら。

女嫌いで喧嘩好きだったニュートン、女癖が悪かったアインシュタイン、現代数学をつくった不遇の天才ガロアは恋愛沙汰で決闘死、蘇る愛とロマンに生きた シュレーディンガー……歴史に残る偉大な科学者たちの人生は、強烈すぎて面白すぎる! 偉大すぎてダメすぎる巨人たちの激烈な人生を、その人間くさい素顔 とともに、人気サイエンスライターがコミカルに紹介。こんな偉人伝、読んだことがない!


 帯の絵を描いて下さったのは

決してマネしないでください。(1) (モーニングコミックス)

などで活躍中の漫画家、蛇蔵さん。ありがとうございます。

 単行本のときの川名潤さんの装丁も素敵でしたが(今さらながら、贅沢させていただいたな……としみじみ)、どちらもお気に入りです。

 そして、単行本のときにもお世話になったイラストレーター、西谷直子さんが、いくつも本文中のイラストを描き直して下さいました。こちらも感謝です。

 初めての単行本化は嬉しいです。文章に関しては、かつてのダメダメなものをかなり読みやすくしたつもりです。どうか、ご愛顧よろしくお願いします。