内田麻理香ブログ:KASOKEN satellite

ブログというかお仕事日記というか身辺雑記というか。

『週刊新潮』6月25日号 インタビュー掲載

 週刊新潮』6/25号でコメントしています。専門家の行うリスク評価/政治の行うリスク管理を区別すべきという内容です。

「吉村知事」が「8割おじさんに騙された」 西浦モデルを阪大教授が全否定した「K値」とは(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

 ただし、この記事の題に表れているような「「吉村知事」が「8割おじさんに騙された」」という、西浦博先生を批判し、K値を称揚する方向性には、まったく同意しません。

 感染症の専門家でない研究者から出された「K値」を専門知として扱うことの不適切さ、危うさについての原稿は書きましたので、来週木曜日の朝日新聞の論壇時評欄「あすを探る」に掲載される予定です。

(掲載されました)

 

kasoken.hatenablog.jp

 

 ただ、この『週刊新潮』6月25日号にあった吉村知事のコメント「(西浦モデルではない)ほかの指標はないか探し、出てきたのがK 値でした。」があったのは、非常に貴重な資料になるかと思います。科学的に信頼できるという理由ではなく、政治側から都合のよい指標を選ぼうとしたことが伺えます。

 

集英社『すばる』寄稿「科学不信と、その処方箋」

 『すばる』7月号に寄稿した論考が掲載されました。

特集は「気候変動と向き合う」。私は、「科学不信と、その処方箋」と題した文を寄稿しています。

 気候変動については科学者の見解は一致していますが、それでも地球温暖化懐疑論をとなえる者は出てきます。不信を持たれたり、嫌われたりしがちな科学について検討し、その処方箋を探ってみました。

 

すばる2020年7月号

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  • 発売日: 2020/06/05
  • メディア: 雑誌
 

 

『朝日新聞』「(#論壇)CF、実は多い「内輪の支援」」コメント寄稿

 朝日新聞の論壇委員が注目する論考を1本選んで、記者が深掘りするコーナー。今年度から、「論×論×論」にかわり、「#論壇」というコーナーが誕生しました。

 今月は私もコメントを書いています。

digital.asahi.com

 注目したのは『都市問題』5月号特集1「クラウドファンディングの現在」です。

出版物のご案内 - 月刊誌『都市問題』 | 公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所(旧財団法人東京市政調査会)

 「ミニシアター・エイド」のクラウドファンディングで3億円が集まったり、食品ロスを救おうと「買って応援」する動きが生まれるなど、市民間の連帯のうねりが高まっていることに注目したいです。

 でも、政府が「クラウドファンディングに期待」するのは筋違いでしょう。政府がすべきは、市民から金銭を吸い上げるのではなく、援助することだと考えます。

休業補償等は政府がすべきだ、という前提は忘れてはならない。しかしその一方で、CFだけでなく、フードロスで困窮する生産者を救う「買って応援」の動きなど、市民の連帯のうねりが生じていることも確かだ。コロナ禍で、さまざまな業種がその形態の変更を迫られている。その状況下で、今後、CFがどのような役割を果たしていくのか着目したい。

毎日新聞『今週の本棚』書評『専門知を再考する』

 毎日新聞に、『専門知を再考する』の書評を寄稿しています。

mainichi.jp

 さまざまな「専門家」がメディアに登場するいま、専門とは? 専門家とは? を考える助けになる本です。

 書評では触れませんでしたが、コリンズとエヴァンズは「メタ専門知」と呼ぶ知のことも精緻に検討しています。ある分野の専門知がない場合でも、「メタ専門知」を使って、その専門家を鑑定できる場合がある、とも。

 ただ、メタ専門知は見目物腰や社会的地位に基づく場合、その「専門家」について誤った判断をしてしまう問題点があることも指摘。 ……あるある過ぎる。

 コリンズの他の著作としては、『我々みんなが科学の専門家なのか?』H.コリンズ著、鈴木俊洋・訳(法政大学出版局)の書評も寄稿しています。コリンズの主張としては「我々みんなが科学の専門家では「ない」」という内容になります。

mainichi.jp 

専門知を再考する

専門知を再考する

 

 

 

朝日新聞にコメントが掲載されました

 朝日新聞の以下の記事に、私のコメントが掲載されています。

digital.asahi.com

それでも日常生活が戻るにつれ、どうしても危機感が薄れてしまう。科学コミュニケーションが専門の内田麻理香・東京大特任講師は、現在の状況は「なぜかうまくいっているだけ」とし、「第2波は必ず来るものとして備えなければならない。その上でできるだけ波の山を小さくすることが大切」と話す。  第1波では、感染した人が差別されるケースもあった。内田さんは「それでは感染したことを隠すようになり、対策できないことでかえって感染が広がりかねない」と指摘する。

 

朝日新聞「論壇委員が選ぶ今月の3点」5月

 朝日新聞の論壇時評の欄に、「論壇委員が選ぶ今月の3点」が掲載されました。

digital.asahi.com

 私の担当する、科学技術からは以下の3点です。

▽中澤港、川端裕人「新型コロナ、本当のこと 『研究室』に行ってみた特別編 神戸大学」(Webナショジオ、5月12日~)

<評>作家・科学ジャーナリストによる、公衆衛生学の専門家へのインタビュー連載。ウイルスの性質やPCR検査数についての議論の解説などが、一歩引いた立場からわかりやすくまとめられている。現時点で読める適切な「教科書」だ。

natgeo.nikkeibp.co.jp

▽「独『科学アカデミー』がコロナで大活躍」(選択 5月号)

▽小野昌弘「『夢遊病国家』から脱却せよ 英国の背中から何を学ぶか」(Voice 6月号)

Voice 2020年6月号

Voice 2020年6月号

  • 発売日: 2020/05/26
  • メディア: Kindle
 

  今回、「3点」に入れることはできませんでしたが、

玉手慎太郎「感染予防とイベント自粛の倫理学」『現代思想』5月号

も非常に勉強になりました。公衆衛生倫理学の立場から、イベント自粛要請について「前向き責任」「後ろ向き責任」と責任の規範をわけて検討した論考です。

 「自粛警察」は、個人の行動を責めるという、まさに後ろ向き責任を問うものでしょう。  感染症対策は前向き責任(当人の置かれた状況に応じて、将来ある特定の行為を遂行することを望ましいとみなす規範)としてとらえるべき、という玉手さんの主張は、今後広く共有されるべき指針だと思います。

青土社 ||現代思想:現代思想2020年5月号 緊急特集=感染/パンデミック